「らしい社会」のブランド戦略

「らしい社会」のブランド戦略

配信日:2026年2月12日

日本経済新聞に、東京都内の自治体がSNS上の偽情報対策に乗り出しているという記事が出ていました。千代田区では発信者の真正性を担保する新技術の実証に参加し、杉並区では職員や住民向けのリテラシー向上施策を進める。東京都も誤情報に対して公式ハッシュタグを使った注意喚起を行っています。選挙や災害など、行政情報が人々の行動に直結する時代において、これは極めて現実的な危機感の表れだと思います。

ただ正直に言えば、こうした取り組みをしても、偽情報を完全になくすことはないように思います。なぜなら情報量は増え続け、人はすべてを確認できず、結局は感情や文脈で判断するからです。その構造自体は変わりません。問題は「誤っているかどうか」ではなく、それが「もっともらしく信じられる形」で広がってしまうことにあると思います。

最近感じる「らしい社会」という現象

職人の世界

最近の社会を見ていて、気になる現象があります。本当かどうかがよくわからない情報がSNSで流れ、それがリツイートや引用、コメントを通じて、あたかも多くの人が同意しているかのように見える状態です。そうした情報の中に身を置いていると、その情報自体が事実かどうかとは別に「事実であるかのように共有されていく」ようです。「どうもこういうことらしい」。私はこれを「らしい社会」と呼んでいます。

この感覚は、調査の現場などでも時折目にします。例えばグループインタビューで消費者の意見を聞いていると、「これはこうらしい」といった「表現」が出てくることがあります。そこで「それは実際に見たのですか?」と聞くと、「いや、見てはいないが、そうらしい。SNSで読んだ」という答えが返ってくる。ここでは誰も嘘をついているわけではありません。しかし、事実や経験よりも先に、雰囲気や解釈が流通し、それが共有されていく。いまの社会には、そうした情報の伝わり方が確かに存在しているように感じます。

これは「認知戦」に近いものがあります

この「らしい社会」は、いわゆる認知戦ですね。認知戦とは戦時に相手の判断や意思決定に影響を与えるために、情報や心理的手段を使うことを指します。つまり認知戦で書き換えられるのは、事実ではなく「解釈の前提」です。

これは国際関係や安全保障の文脈でよく使われます。ロシアによる情報戦は私たちの目の前で起きていることといえるでしょう。それは単なるデマのばら撒きではなく、相手社会の認知環境そのものに働きかける戦略です。彼らの目標は、相手国の内部矛盾や不満を増幅して社会の亀裂を広げ、結果として相手を弱体化させることだと思います。

この認知戦を見抜く鍵は、「物理戦」と「情報戦」を分けて考えることです。例えば、ロシア軍が戦場で占領した領土や戦闘の実態を知ることで、「その情報を信じられるか」をより正確に判断できます。物理的な現実をみることでネット上の情報とのズレが見えてきて、認知戦に巻き込まれにくくなるのです。これは戦争の文脈だけでなく、企業や社会が情報空間を扱う際にも同じことが言えます。

SNSは「真実を知る場所」ではなく、「社会を観察する場所」

OJT

ただ、偽情報かどうかを逐一判断しようとするとSNSとの付き合いは消耗します。そして上記のような構造があるとすれば、結局、「らしい社会」の餌食になるでしょう。よってSNSは別の使い方をするとよいと思います。SNS上に「いま、どんな情報が流れているのか」を見る。そのほとんどは信じる対象ではなく、「観察の対象」と割り切る。情報を信じるために見るのではなく、社会の動きを観察するために見る。このスタンスをとるとSNSは一気に意味の違うものになります。真実の源泉ではなく、社会の温度計として役立ちます。

社会の関心や感情の流れが見えてくる

観察の対象は、その情報に「誰が反応しているのか」「どんな感情が動いているのか」です。そして「なぜ今それが広がっているのか」の背景や理由に想いを巡らします。つまり、見ているのは「情報が動かす人間」です。SNSは社会心理の「リアルタイム観測所」になります。信じる人は流され、SNSを否定する人は、視野を狭めてしまいます。そのどちらでもなく、観察する立場に立つことで、距離を保ったまま社会の関心や感情の流れを読み取ることができます。

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