インターネット黎明期から読み解くAI黎明期のブランド戦略

インターネット黎明期から読み解くAI黎明期のブランド戦略

配信日:2026年1月28日

生成AIを導入する企業は増えつつありますが、現場で起きていることを見ると、仕事が大きく変わったという実感はまだ乏しいように思います。AIが出したアウトプットを見て「なるほど」「ふーん」と受け止め、そのまま従来のやり方に戻る。多くの企業はいま、そんな段階にいます。

これはAIを使いこなせていないというより、仕事の前提や「やり方」がまだ変わっていない状態だと思います。

この光景は、インターネット黎明期とよく似ています

古いパソコン

1990年代後半、企業にインターネットやメールが入り始めた頃も、状況はよく似ていました。メールは導入されたものの、重要な連絡は電話で行い、資料はメール送付後に紙で配る。またはメール内容(例えば注文書など)をFAXでも送る。「送りましたのでご確認ください」と、わざわざ電話をかけることも珍しくありませんでした。インターネットという新しい道具は手元にありましたが、仕事の流れそのものは、ほとんど変わっていなかったのです。

ではインターネットはどのように普及・定着していったのか。ざっと振り返ってみましょう。

1995年:Windows95が話題になった

Windows95

1995年にWindows95が登場して、日本でもインターネットは一気に注目を集めました。インターネット接続がパソコンOSの標準機能として組み込まれ、「特別な人のもの」だったネットが、一般のビジネスパーソンの視界に入ってきたのです。ただし、この段階で仕事が変わったわけではありません。インターネットは「すごそうな新技術」「次に来るトレンド」として語られ、話題にはなったものの、実務の中心にはまだ置かれていませんでした。

多くの企業にとって、この時期のインターネットは「とりあえず触ってみるもの」であり、既存の仕事の流れを置き換える存在ではなかったのです。いまのChatGPTやCopilot、Geminiと同じ状態です。

1996〜2000年:常時接続が、仕事を変え始めた

LANケーブル

その後、状況を変えたのが通信インフラの整備でした。テレホーダイによる深夜定額接続、ADSLの登場による通信速度と料金の改善によって、インターネットは「つながるかどうか」を気にする存在ではなくなっていきます。1997年には利用率が約9%、1999年には約21%、2000年には37%と、利用者は急速に増えていきました。(総務省「令和6年版情報通信白書」)

この時期からインターネットが少しずつ仕事の流れに組み込まれ始めます。資料をメールで送る、社内で情報を共有する、事前に目を通してから会議に臨む。こうした使い方が、一部の先進的な部署や企業で広がっていきました。仕事はまだ大きく変わっていませんが、「変わり始める兆し」は、確かに生まれていました。

1999年:iモードが、デジタルを「日常」にした

Internetは常に持ち歩くもの

そして1999年にNTTドコモがiモードを出したことが日本独自の転換点だったと言えます。パソコンを立ち上げなくても、携帯電話でメールや簡単なWeb閲覧ができるようになり、インターネットは「机に向かうもの」から「常に持ち歩くもの」へと変わりました。これにより、外出先での確認、簡単な連絡、スケジュール調整といった行為が、その場で完結するようになりました。

この変化は、仕事の進め方に影響を与えました。連絡のスピードは上がり、「あとで戻って処理する仕事」が減っていきました。日本では、スマートフォン以前に、ガラケーでネットを使う文化が先に成熟したのです。

2000年代以降:インターネットは「当たり前」になった

さらに2000年代に入ると、ブロードバンド回線が急速に普及し、光回線やADSLは家庭やオフィスで当たり前の存在になります。そして現在。動画、SNS、クラウドサービスが広がり、インターネットはもはや「使うかどうか」を考える対象ではなくなりました。2020年代には利用率が80%を超え、社会インフラとして完全に定着しています。

もはや「インターネットを使う人/使わない人」という区別そのものがなくなりました。そして「使うかどうか」ではなく「仕事のどこに組み込んだか」が企業の競争力や生産性に影響を与えたのです。

ここから見えてくる、AIでも起きそうなこと(仮説)

AIでも起きそうなこと
仮説1.AIもいずれ「使うかどうか」は問題でなくなる
インターネットと同様、AIもいずれ「使うかどうか」は論点でなくなります。数年後には、AIを使わないという選択肢はなくなるでしょう。差になるのは、企画の初期なのか、資料作成なのか、レビューなのか、どの工程にAIを組み込んでいるかです。
仮説2.「考えなくてよい部分」が、前提として固定化される
インターネットが定着したあと、連絡はメール、資料共有はフォルダというようなスタイルが半ば自動化されました。いちいち考えなくてもよい部分が増えたことで、人は別のことに時間を使えるようになったのです。
AIでも同じことが起きます。情報収集、過去事例の洗い出し、たたき台の作成といった作業は「前提作業」として固定化され、逆に「戦略オプションの選択」「実施可能性の細やかな検討」「実施プロセス」などが人間の仕事となっていきます。
仮説3.逆に「考えざるを得ない部分」が露出する
インターネットで情報が誰でも簡単に手に入るようになり「調べる」「資料を集める」といった行為そのものは、あまり価値を持たなくなりました。代わりに問われるようになったのは、その情報をどう読むのか、どこを信用し、どこを切り捨てるのかという情報リテラシーでした。

AIでも、まったく同じことが起きるでしょう。競合分析も、過去事例の整理も、コンセプト案のたたき台も、AIは簡単に出してきます。しかし、それをそのまま採用するのか、修正するのか、そもそも使わないのか。その判断がキモになります。つまりAIは「その人や組織がどの程度、情報を見極められているか」を迫る存在といえます。

AIはブランド戦略をより「考えるもの」にする

このように見ていくと、AIは考えなくてよい部分を削り落とし、考えざるを得ない部分を前に押し出す存在といえそうです。つまり、ブランド戦略の仕事はこれまで以上に思考・判断中心のものに変わっていきます。インターネットがそうだったように、おそらく数年かけて「これまでの仕事」が書き換えられていくと思います。私たちはその変化の入口に、すでに立っています。

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