
ブランド戦略のコア、バリュープロポジション
配信日:2025年10月01日
マーケティングの出発点は、生活者の本当の声をとらえることです。これをインサイトといいますね。例えば「健康になりたい」という表面的な欲求の奥には、「家族に迷惑をかけたくないから健康でいたい」という深い本音が隠れています。これを見つけることが、ブランドがどんな価値を約束するべきかを決める第一歩になります。
バリュープロポジションは“コア”である
インサイトに対するブランドの約束が、バリュープロポジションです。ここで大切なのは「コア」と「パーツ」を見極めることです。コアとは、ブランドが顧客に伝えたい中核の価値。たとえば「安心して毎日続けられる。健康習慣を届ける」というのがそれにあたります。一方で、製品の具体的な特徴である「自然由来の成分」「飲みやすい粒」「持ち運びやすいパッケージ」は、そのコアを支えるパーツにすぎません。

ベネフィットラダーで価値を整理する
バリュープロポジションを整理するうえで役立つのが「ベネフィットラダー」というツールです。これは製品が持つ属性を出発点に、そこから得られる機能的価値、そして最終的に情緒的価値へと“はしご”のように積み上げていくフレームワークです。ベネフィットラダーはまるでパーツ、パーツを構成する「素材置き場」であり、そこから中核となる約束を切り出したものがバリュープロポジションです。
例えば健康サプリの場合、「自然由来の成分」「飲みやすい粒」というのは属性にあたります。そこから「毎日続けやすい」「体調を整える」といった機能的ベネフィットにつながり、さらに「家族に迷惑をかけず安心して過ごせる」という情緒的ベネフィットへと発展します。最終的にこのラダーをまとめて表現すると「家族に迷惑をかけない安心を、毎日の健康習慣で届ける」というバリュープロポジションにたどり着くのです。

マーケターが陥りがちな罠
現場ではどうしても、製品属性や機能性といった分かりやすい情報に目が行きがちです。「自然由来」「低カロリー」「栄養豊富」などの情報を積み重ねるうちに、伝えるべき価値が情報の洪水になってしまい、結局「何がバリュープロポジションなのか」がわからなくなる。
さらに厄介なのは、インサイトから外れたパーツを、あたかもコアのバリュープロポジションだと思い込んでしまうことです。もちろんそれもバリュープロポジションの一部ではありますが、残念ながら「弱いバリュープロポジション」と言わざるを得ません。なぜなら、それは顧客ニーズの一部しか満たせず、将来、ブランドを展開する「応用の幅」が限られてしまうからです。しばらくするとネタ切れを起こし、さらに機能性は競合に模倣されやすいため差別性を失うリスクも大きいのです。
明確な見極め方がブランドを強くする
「コア」と「パーツ」を区別して整理することで、ブランドの価値は一貫性を持ち、メッセージは研ぎ澄まされます。マーケターが抱えがちな「何がバリュープロポジションかわからない」という課題も、この視点を取り入れることで一気にクリアになります。情報の整理術はブランド戦略の生命線。まずは自社の価値をコアとパーツに分けてみることから始めてはいかがでしょうか。