
うちのブランドって何?
配信日:2025年5月7日
企業の中で、「うちのブランドって何なんだろう?」という問いがふと出てくることがあります。これはブランドを再発見するきっかけになる、重要なサインです。
多くの企業では、ブランドという言葉が広告の話や商品名のことと受け止められています。しかし、ブランドとは本来、もっと広く、もっと深く、組織の根幹に関わるものです。社員の判断や行動、顧客との関係性、そして将来の方向性にまで影響を与える“らしさ”のこと。それが「うちのブランド」です。
ブランドらしさを見つけるプロセス
私がクライアントのブランドを見直すとき、まず最初に取り組むのは、そのブランドの「歴史」を調べることです。過去数年間にわたって、どんな施策が打たれ、どんな製品が発売され、どんな表現がされてきたのか。そしてその時々で売上はどうだったのか。事実とともに、そのブランドがどう歩んできたかを丹念にたどります。これを過去数年に渡る売上のアップダウンと重ねて辿ります。
そうすることで、「これはそのブランドらしい」「これはどうもらしくない」という感覚が、だんだんと見えてきます。過去に一度だけ跳ねた企画があったとして、それが持続しなかったのなら、それは本質ではないかもしれない。逆に、地味だけれど継続されてきた価値観や姿勢があるなら、それこそがブランドの核かもしれません。
未来への戦略は、過去から生まれる
ブランド戦略とは、この“らしさ”を探し出し、それを未来にどうつなげていくかを考えるプロセスです。これまでやってきたことの中から、捨ててはいけないもの、もっと強く打ち出すべきものを見極める。そして、その選択の先に、「このブランドはこうあるべきだ」という軸が見えてきます。
このプロセスは、製品ブランドでも、企業ブランド(コーポレートブランド)でも同じです。どちらにも“積み重ねてきたもの”があり、そのなかにブランドの正体が眠っています。
パーパスは過去とつながるときに力を持つ
パーパス(存在意義)という考え方も大切です。これも過去の蓄積を無視して生まれるものではありません。パーパスは、これまでの歴史と違和感なくつながるときにこそ、強く信じられる軸になるのです。これがあたかも根っこ(パーパス)、幹(ミッション)、枝(ビジョン)、葉っぱ(バリューズ)のように企業の骨格をなし、しかも現場スタッフに適時、よいタイミングでそれをリマインドする時に、コーポレートブランドはらしさを纏い始めます。

ブランドとは「過去からの発見」である
結局、「うちのブランドって何?」という問いの答えは、外にあるのではなく、自分たちの中にすでに存在していることが多いのです。過去を見つめ、違和感を感じ取り、選び抜く。その積み重ねの先に、ブランドの“らしさ”はじわじわと立ち上がってきます。実務におけるブランドとは過去の経緯から見つけていくものだと思います。そんな実感を持ちながら、そのブランドの可能性を探りだすことがブランド戦略の第一歩です。