ヒット率を高めるブランド戦略

ヒット率を高めるブランド戦略

配信日:2026年1月21日

多くの企業では、値上げ、利益創出、そして新商品のヒット率向上がここ数年続く未解決の課題になっています。原材料費や人件費の上昇を受け、価格を上げざるを得ない一方で、数量は伸び悩んでいる。新商品を出しても、当たる確率は年々下がっている。これは多くの現場で共有されている実感だと思います。

このとき、ブランド戦略はしばしば「理想論」や「中長期の話」として脇に置かれがちです。しかし本来、ブランドは新商品のヒット率を上げるためにあるとありがたい。では、ヒット率が高いブランドは、何をしているのでしょうか。

ヒット率の差は「アイデア」ではなく「顧客の記憶」にある

新商品のヒット率が低いと、「もっと新しいアイデアが必要だ」「今までにない価値を出そう」という議論になりがちです。しかし実際には、新しさとヒット率は必ずしも比例しません。むしろ、新しすぎる商品ほど、理解に時間がかかり、初速が出にくいのが現実です。

一方でヒット率が高い商品には共通点があります。それは、顧客の頭の中に、すでに「置き場所」があることです。見た瞬間に「知っている」「分かる」「あれだ」と理解される。ブランド資産とは、ロゴやネーミングではなく、こうした顧客の頭の中にある記憶のことです。ヒット率の高低は、この「記憶」を使えているかどうかで決まります。

ニュービートルが呼び起こした「祖型の記憶」

ニュービートル

この構造を分かりやすく示したのが、フォルクスワーゲン・ニュービートルです。1990年代後半、自動車は性能や合理性で同質化していました。その中でニュービートルは、最新技術で競争したわけではありません。

丸い、愛嬌のあるフォルム。合理的で経済性を重んじる価値観の象徴。これらはすべて、かつてのビートルを知る人々の記憶に残っていた「祖型」です。ニュービートルは、その祖型の記憶を現代的に翻訳したクルマでした。だからこそ、「新車なのに、初めての感じがしない」。この感覚が、発売当初からの高い支持とヒットにつながったのです。

チキンラーメンに見る「記憶を壊さない」新製品設計

チキンラーメン

食品の世界でも、同じことが起きています。日清食品のチキンラーメンは、長年にわたりパッケージやブランドの顔を大きく変えていません。配色、ロゴ、キャラクターは、世代を超えて共有される記憶として維持されています。

一方で、たまごポケットの導入や、レトロデザイン、限定企画など、新しい要素は継続的に足されています。ここで行われているのは刷新ではなく、顧客の記憶を壊さないまま、価値を上書きする設計です。その結果、新商品であっても「知っている安心感」があり、ヒット率が安定する。これは偶然ではありません。

ヒット率を高めるブランド戦略とは何か

これらの事例から見えてくるのは、ヒット率を高めるブランド戦略の正体です。それは新しいアイデアを次々に生み出すこと以上に、顧客と共有しているブランドの記憶を梃子にして、新商品を設計することです。

顧客の記憶にアクセスできる商品は、説明コストが低く、初速が出やすい。「あのブランドならよく知っているよ」とすんなり受け止めてもらえます。ヒット率が高い企業は、意識的にこの設計を行っています。

ヒット率を高める長期的なメカニズムを作ろう

顧客の記憶や愛着をベースにした新商品は、それ自体が単発の成果で終わりません。むしろ、その新商品自体が、次の新商品のための布石になります。つまり、売上をつくるだけでなく、ブランドの文脈を太くするブランド投資になります。すると次に出てくる新商品は、ゼロから説明する必要がなくなり、出しやすく、売れやすくなる。ヒット率は、個々の商品努力ではなく、ブランドの履歴によって底上げされていきます。これがブランディング(branding)と現在進行形で語られる実態であり、新商品が成功しやすくなる理由なのです。

この上方スパイラルのモメンタムを意図的につくり出せているかどうか。ここに、ヒット率が高いブランドと、単発勝負を繰り返すブランドの決定的な差があります。ヒット率を高めるとは、一本の成功を狙うことではなく、成功が連鎖する構造をブランドとして設計することなのです。

年別バックナンバー

人気の記事

ブランド構築ガイドブックⅢ 無料進呈中 ▶

bmwin

ブランド構築ガイドブックⅢ
【AI導入戦略編】無料進呈中!
ダウンロードする ▶