〜「いまの価値」から「未来をよくする存在」へ〜 未来を見据えたブランド戦略

〜「いまの価値」から「未来をよくする存在」へ〜 未来を見据えたブランド戦略

配信日:2025年9月24日

日経リサーチが公表した2025年版ブランド戦略サーベイでは、ヤマト運輸が3年連続で総合首位となりました。

宅配という生活インフラとしての信頼感に加え、人手不足という社会課題に対しロボット配送などの革新で挑戦している点が評価されています。2位のパナソニックは美容家電で若い女性層に支持され、明治や味の素なども新たにトップ10入りしました。

評価されたブランドの共通点

今回評価を高めた企業には、いくつかの共通点が見られます。

第一に、ヤマト運輸のように生活インフラとしての信頼性と革新性を両立し、社会課題に向き合っていること。

第二に、明治の機能性食品のように確かな機能と高付加価値で生活の質を高めていること。

第三に、トヨタがKINTO(カーサブスクリプション)やウーブン・シティで見せたように、大企業であっても新しい挑戦に取り組む柔軟性を持っていること。

第四に、味の素やキユーピーなど日常の幸福感や安心感を提供する食品ブランドが強さを見せていること。

そして第五に、新設された「社会必要度指標」に代表されるように、「未来をよくしてくれそうだ」という期待を獲得していることです。今回ランクインした企業は「いま役立つ」だけでなく「これからの暮らしや社会を良くしてくれそう」という期待を集める企業ばかりです。

なぜ「社会必要度」が調査に加わったのか

今回の調査で、この社会必要度という指標が導入された背景には、おそらく生活者の深い未来不安がありますね。生活者は物価高、賃金停滞、少子高齢化などが重なり、「この先、自分たちの暮らしは本当に良くなるのか?」という構造的な不安が広がっています。それに政治や制度への信頼も揺らぎ、「誰も未来をよくしてくれないのでは」という無力感さえ漂う中、人々は企業に安心や希望を託すようになっているのではないでしょうか。もしそうなら、いまは単に「便利」や「高品質」ではなく、「未来を託せる存在かどうか」がブランド評価の指標になるのも納得できます。

graf

ブランド評価の軸が「現在」から「未来」へ

繰り返しますが、今回のブランド戦略サーベイ結果が示している本質は、まさにここにあると思います。過去の調査は、基本的に「いまの価値」や「現在の魅力度」でブランド力を測ってきました。今回、そこに新しく社会必要度が加わったということは、もはや「いま良いブランド」では足りず、「これからの社会をよくしてくれそうなブランド」が評価される時代に入ったということだと思います。

実際、ヤマト運輸やトヨタ自動車は「インフラを守る」「人手不足やモビリティといった社会課題に挑む」ことで上位評価を得ています。つまりいま、「未来貢献性」がブランド力の中核に組み込まれつつあると思います。

未来を見据えるとは、未来を担う存在になること

この動きは、マーケティングの現場にも示唆を与えます。これまで「未来を見据える」といえば、次に売れそうな商品を予測したりトレンドの先を読むといった「ヒット商品を当てる発想」が中心でした。しかし今問われているのは、「そのブランドが未来をどう良くするか」という視点です。

つまり、いまブランドは「消費を生む装置」ではなく、「社会を動かす主体」として見られつつあるように感じます。未来を見据えたブランド戦略とは、自らが未来を担う存在になるという決意を示し、行動でそれを裏づけることです。いま、その転換点に私たちは立っているようです。

年別バックナンバー

2025年 人気の記事

ブランド構築ガイドブックⅡ 無料進呈中 ▶

bmwin

ブランド構築ガイドブックⅡ
【企業ブランド活性化編】無料進呈中!
ダウンロードする ▶