全てのブランドが直面する最初の関門【信頼の谷】を越えるブランド戦略

全てのブランドが直面する最初の関門
【信頼の谷】を越えるブランド戦略

配信日:2025年8月20日

世の中の多くのブランドは、一定の周期でリニューアルやリブランディングを繰り返しています。理由は、消費者の価値観や社会の空気が常に変わるからです。昨日まで魅力的だったメッセージやデザインが、今日には古く見えたり、無関心に受け止められたりするのは珍しくありません。ブランドはその変化に適応し続けることで、初めて「信頼」を維持できるのです。

GPT-5が登場した背景

こうした現象はAIの分野にも見られます。最近、OpenAIがGPT-5を発表した背景には、ChatGPTが世界に広がった一方で、「本当に業務に耐えうるのか」という疑念があったことがあります。精度・一貫性・マルチモーダル対応など、実務導入に必要な要素がまだ物足りないと指摘されてきました。そこに加えて、世界的にGeminiや中国勢など競合との競争のなかで、「次の信頼」を勝ち取るためのリニューアルが求められていたのです。GPT-5の登場はまさに「信頼の谷を越える」ための進化といえます。

信頼の谷とキャズム(溝)との違い

「信頼の谷」とは、話題や性能だけでは不十分で、「日常の業務や生活に安心して組み込めるかどうか」で試される段階を指します。似た概念に「キャズム(溝)」があります。これはイノベーション普及論で、アーリーアダプターからマジョリティに広がる間に存在する「普及の断絶」を意味します。信頼の谷はキャズムに似ていますが、数値的な普及率ではなく、「安心して任せられる」と感じられるかどうか、心理的なハードルに焦点がある点で異なります。

信頼の谷を越えたブランドの事例

信頼の谷を越えられたブランドは決して多くありません。たとえばビデオ会議の世界では多くのブランドがありましたが、信頼の谷を越えたのはZoomでした。直感的で使いやすく、何よりも安定性と安心感を提供したことで一気にマジョリティに受け入れられました。

また、古い事例ではマイクロソフトもそうです。かつてグループウェア市場にはロータスなどのブランドもありましたが、信頼の谷を越えられたのは最終的にマイクロソフトでした(ロータスはIBMに買収されましたが、その後は存在感を失いました)。「安心して業務の標準にできる」という信頼を築いたことで、結果的に市場全体を獲得したのです。

約束を再定義するという答え

信頼の谷を越えるには、ブランドが掲げる約束をただ守るのではなく、時代に合わせて再定義することが必要です。古い約束を捨てるのではなく、その意味を広げたり深めたりすることによって「進化」として受け入れられます。スターバックスが「コーヒーの店」から「サードプレイス」へ、ナイキが「トップアスリート」から「すべての人に挑戦を促す存在」へとシフトしたのはその好例です。

信頼を未来へつなぐ物語

再定義を成功させるには、単に新しい約束を提示するだけではなく、過去から未来への橋を物語として紡ぐことが欠かせません。かつての約束を守ってきた誇りを示しつつ、新しい時代にふさわしい約束を打ち出す。そこに「進化のストーリー」があるからこそ、人は裏切られたのではなく、新しい信頼に参加したのだと感じるのです。ブランド戦略とは、信頼の谷を越える挑戦であり、越えた後にその信頼を未来へつなぐ物語を紡ぐ営みなのです。

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