AIブランドのポジショニング戦略

AIブランドのポジショニング戦略

配信日:2025年12月17日

AIブランドはいま、技術・体験・入口という三つの価値軸で分岐し始めています。最近、オープンAIが「ChatGPTの改善に集中する」として非常事態を宣言し、いくつかの新機能の投入をいったん見送るというニュースがありました。背景には、利用時間の減少や「親しみやすさ」の弱まりが指摘されており、かつての勢いに陰りが見え始めています。

一方、3年前にChatGPTの登場で危機感を募らせていたグーグルは、新しいAIの評価が高まり、画像生成AIのヒットもあって利用者が急増し、追い上げが鮮明になっています。こうして両社の立場が入れ替わりつつある今、AIがようやく「それぞれの立ち位置」を示し始め、ブランドとしての個性が浮かび上がってきたように思います。

AI市場で起きた「追う側と追われる側」の転換

今回のニュースでは、オープンAIがChatGPTの会話体験を立て直すことを最優先に掲げました。人気の理由だった「話しやすさ」や「寄り添う感覚」が弱まり、ユーザーの滞在時間が減少しているためです。

一方で、グーグルは「速い・便利・正確」という評価を積み上げ、検索や地図、YouTubeなど日常生活とつながるインフラとの連動も追い風となり、利用者数が急伸しています。3年前にはオープンAIの急成長に追われていたグーグルが、いまは性能と利便性を武器に立場を押し戻してきた構図です。AI市場は、追う側と追われる側が明確に入れ替わり始めています。

技術を磨くグーグル、体験を磨くオープンAI

ここで見えてくるのは、両社がブランドとして大切にしている価値軸の違いです。グーグルは「速さ・正確さ・便利さ」といった機能価値を徹底的に磨いています。検索や地図、YouTubeといった日常に深く組み込まれたプラットフォームを背景に、AIを「生活インフラの延長」として進化させています。

対してオープンAIは、「体験価値」に重きを置いています。ChatGPTが多くの人から支持を集めたのは、性能だけでなく「話しやすい」「寄り添ってくれる」という関係性の部分でした。その根幹が揺らいだことで、今回の「原点回帰」の決断に至ったといえます。

AIの「入口」をめぐる争奪戦

AIの「入口」をめぐる争奪戦

さらにここへきて、マイクロソフトがMSNをリニューアルし、Copilotをトップページに組み込みました。これは 「AIを使うためではなく、AIから始まる日常」 を設計する動きです。検索欄がGoogleの入口だったように、ホーム画面やニュースサイトがCopilotの入口になるというのは、どのAIがユーザーの日常の最初の行動を押さえるかという競争の始まりです。

入口を押さえたブランドは、「ユーザーの習慣」「データの蓄積」「継続利用」など、すべてを優位に進めることができます。これはブラウザ戦争、検索戦争と同じ構図で、AIブランドが「技術」でも「体験」でもない、「第三のポジショニング=生活の起点になるAI」を目指し始めたともいえます。入口を押さえるブランドは、ユーザーにとって「AIと出会う場所」そのものになります。これは単なるサービスの比較を超えた「生活習慣の争奪戦」です。

ブランドのすみ分けが始まり、AIはようやく「個性の時代」へ

技術が広く普及した市場では、価値の差は技術そのものよりも「どんな体験を提供するか」「どんな存在として記憶されるか」によって生まれやすくなります。今回の流れは、AIブランドが独自のポジションを取り始めたことを示しています。グーグルは便利さと機能性を極める方向へ、オープンAIは会話という体験の質を磨く方向へと進み始めています。

そしてマイクロソフトは、「入口の支配」という全く別の視点で、AI市場を押さえに動き始めています。これまで「どれも似ている」と見えがちだったAIサービスが、ここからは本格的に差別化され、ブランドとしての個性がより鮮明になっていくでしょう。

どの価値を磨くかが、ブランドの未来を決める

ブランドは、どの価値を磨き、どこを守るのかによって、まったく異なる存在へと育っていきます。グーグル、オープンAI、そしてマイクロソフト。それぞれが異なる価値軸でポジショニングを描きはじめました。機能を極めるのか、体験を極めるのか、あるいは入口を押さえるのか。その選択が、ブランドの独自性と未来を形づくっていきます。言葉を変えれば、自分たちはどの価値を選び、どこを磨くべきなのか。ブランド戦略は、そこから始まります。

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