
ブランドの安心感は、“ゆらぎ”から生まれる
配信日:2025年4月16日
最近、物価の上昇や社会の不安定さを感じる場面が増えてきました。将来の見通しもつかみにくく、毎日のように不安なニュースが流れてきます。そんな中で、私たちはどんなものに安心を感じているのでしょうか。
それは、いつものコンビニ、いつものTシャツ、いつもの味かもしれません。変わらない存在が、心を落ち着かせてくれる。ブランドもまた、「変わらない」ことによって、人々に安心感を届けています。けれど、ただ変わらないだけでは、人の心は離れてしまいます。飽きがきてしまうのです。実はこの「安心」と「飽き」の間にある“ゆらぎ”こそが、ブランドの大切な仕掛けなのです。
安心を支える「ゆらぎ」の演出とは?
ブランドにおける安心感とは、単に同じものを出し続けることではありません。「変わらないように見える」ことを、どうデザインするか。ここに、ブランドの知恵があります。
たとえばユニクロを見てみましょう。エアリズムのインナーウェアなど、長年愛されている定番商品があります。けれど、同時に季節ごとに目を引く企画も登場します。これがブランドに“動き”や“奥行き”を与えてくれています。
カルビーのポテトチップスやじゃがりこもそうです。うすしおやサラダ味は昔からの安心の味ですが、季節限定の新しい味やSNSとの連動キャンペーンで、消費者に新鮮さを届けています。こうした変化があるからこそ、「いつもの味」がありがたく感じられるのです。
安心感は「変わらなさ × ゆらぎ」でできているのですね。安心感とは、ただ変わらないことではありません。そこに少しの変化や演出が加わって、初めて「変わらない安心感=信頼」として成り立つようです。
定番を売るために、あえて変化を仕掛ける
言いかえれば、こんなふうに整理できます。
安心感 = 変わらないこと × ゆらぎ(演出)
ブランドが本当に売りたい「定番」を長く愛してもらうためには、周囲にちょっとした「ゆらぎ」をつくって、定番が際立つように演出していくことが大切です。そのゆらぎがあるからこそ、人は「やっぱりこれがいいな」と思えるのです。
変わらないように見せる設計

つまり安心感は、偶然できるものではありません。それは、ブランドが戦略として、繊細に設計しているものです。「定番を守る。けれど、退屈にはさせない。」このバランスを取るために、キャンペーン商品や限定品、SNSでのちょっとした話題など、さまざまな手段を使って「動き」を演出しています。
ブランドは、ずっと変わらない芯を持ちながら、時代や空気に合わせてゆらぎをつくっているのです。そしてその結果として、「安心できるブランド」ができあがっているのです。そう考えると、変わらないというのは、じつはとても緻密につくられた「演出」なのかもしれません。そんなふうにブランドの安心感を見てみると、定番商品や老舗ブランドのあり方が、少し違って見えてくるのではないでしょうか。