アフター・コロナのマネジメント③/マーケティング戦略
配信日:2020年3月6日
デマによるトイレットペーパーの品不足。「デマを流す」奴らへの怒りは言うまでもないのですが、一方でお店の店員に詰め寄る消費者というのもどうかと思う。モノがなければ確かに困るし、そのひとには大事な家族がいることもわかります。でも自分のことしか考えず、お客としての権利を主張するのは見苦しい行為だと思います。
コロナが終息した後、事業構造の転換をはかる会社やオンラインなど新しい売り方を始める会社が増えることを考えると、マーケティング戦略で一番大きく変わるのは競合関係(フレーム・オブ・リファレンス)でしょう。フレーム・オブ・リファレンスは顧客がニーズを感じた時に思い出すブランドの束(たば)のことだけれど、その顔触れが変わっていく可能性が高いと思います。つまり、ぴったりのサービスやぴったりの売り方を用意した新規参入が増える。真っ先に思いつくのはGAFAのような会社です。または小回りの利くITベンチャーなどかもしれない。いずれにせよ、目先の利く会社が新しいサービスや商品を出して来るでしょう。
例えば仕事でリモートワークが増えるので「社内の人と、まるで社内にいるような日常コミュニケーションを可能にするアプリ」を開発するとする。そのアプリには社内掲示板のようなものがあり「こういうデータが欲しいけれど、誰に頼んだらいい?」など不特定多数の社員に質問できるようなものかもしれない。これは今のオンライン会議のアプリでは出来ない課題を解決します。するとそれまでのオンライン会議用アプリは新たな競争をすることになります。もっともこんなアプリも既にあるかもしれませんが・・・。いくつかの業界ではこのような動きがでるのではないでしょうか。
まず新しい競争関係が生れ、それから戦い方を考えることが多いように思います。その時、自ブランドの差別化ポイントもブラッシュアップしなければならない。投資もかかるし時間もかかるかもしれません。しかし強力な競争相手が出てくるとしたら対処しないわけにいかないのです。しかしそうしなくても良い方法もあります。好ましいのは競合が参入する前に「新しい差別化ポイントを先に打ち出す。時には意図的に陳腐化させるような新しい価値を作り出す」ことで、これがブランド・イノベーションの真髄です。マーケティングに秀でた企業がやっているのは、コロナ以前からこの戦略で、例えば日清食品の「カップヌードルをぶっ潰せ」などはその典型です。他社にやられる前に自らイノベーションを起こし、更に魅力的なものにすることを社内スローガンにして取り組んでいます。今後、そのような発想と行動がもっと多くの企業に求められると思います。その過程で新しい差別化ポイントの打ち出しが現在の強みだけで賄えないのならば、他社とのアライアンスなど「新しい武器」を手に入れることも考えなければならないでしょう。特に異業種からの新規参入が想定されるなら、そことの協業を考えるのも選択肢としてあります。いずれにしてもかつてのような自前主義で、自社だけで完結するようなやり方は難しいことが多くなっています。
こうやって考えると、アフター・コロナでも現在のブランド・イノベーションが引き続き大事だと言えます。「もしグーグルがうちの製品・サービスを作るとしたらどんなものか」。このような質問がイノベーションのアイデアを得る方法です。そんなことを考えてみてはどうでしょう。そこで出てきた突拍子もないアイデアは貴重な「未来の種」になるかもしれません。