ブランドのM&A戦略
配信日:2024年8月16日
お盆休みもそろそろ佳境に入ってきて、昨日から働いている方もいらっしゃるのではないかと思います。支援先企業からのメールもぼちぼち入り始めています。私たちビーエムウィンも今週は世間並みに休暇を頂きました。一方で仕掛中の調査の集計が終わったこともあり、結局は仕事をしている現実もありました。さて今日は「ブランドのM&A」について話しましょう。「チョコレートバーの「スニッカーズ」やチョコレート菓子「M&M's」を製造する製菓大手の米マースは14日、ポテトチップスの「プリングルズ」で知られるスナック食品のケラノバを359億ドル(約5兆3000億円)で買収することで合意したと発表した(日経新聞8月15日)」。ケラノバというのは聞きなれない社名かと思いますが、これは2023年10月に社名変更をしたケロッグです。プリングルズは旧ケロッグの傘下にあったのですね。昨今の米国におけるインフレによって食品などの日用品であっても買い控えがあり、マース社はラインナップの充実によって売上、市場シェアを「買い取った」ことになります。
M&Aによって市場支配力を強める戦略はそれほど目新しいものではありません。法律に触れない限り、資金力によって競合や新興企業を身内にしていくのは最も賢いやり方だと思います。一方で買収による成長とは、買収したブランドの売上高を足し合わせただけのことだというのも事実でしょう。しかもそのブランドが既に落ち目であれば、売上増加は買収した時点の一時的なもので、お荷物を背負い込むことにもなりかねない。こうして買収されたブランドはその後、更に売りに出されることになるのも珍しくない。
一方で戦略的に大きな意味のあるM&Aが存在するのも事実です。直ぐに思いつくのは、ソフトバンクによるボーダフォンの買収でしょうか。2006年、1兆7,500億円での買い物でした。これによってソフトバンクは携帯キャリアとしてのインフラと顧客基盤を迅速に手に入れました。その後、携帯(スマートフォン)は生活のハブ(拠点)となり、ソフトバンクは生活のインフラを支える存在となりました。当時、社内でどのような話がされたのかはわかりませんが、このM&Aは企業が一皮むけるための「新しい武器」だったのは良く分かります。もしこれを一から自前で行ったのであれば、とても非効率で成功の確率も低かったのではないと思います。「企業が一皮むけるには、それに相応しい新しい武器がいる」。M&Aをそんな視点で捉えるとブランドの進化や発展を促す戦略と位置付けられるでしょう。