顧客の想定内を上回るアイデア

配信日:2018年10月03日

イノベーションを生み出すのは2つのフェーズがあります。ひとつはシーズ開発で、これは昔から日本の製造業が得意としてきたもの。もう一つは、そのシーズを斬新なコンセプトや使用方法にパッケージ化(単なるパッケージ・デザイン制作ではない)するフェーズで、ここはオープン・イノベーションが得意とするところです。

実は後者のほうが重要ではないかと、私は思っています。なぜなら、パッケージ化の出来不出来はそのまま売上に影響するからです。売れなければ、どんな革新的なシーズも存在しなかったに等しいものになります。

パッケージ化では消費者の潜在ニーズにアピールする仕立てが求められます。ここが難しいところです。単にアイデアをいくつか出せばよいというものではなく、クリエイティブが求められます。以前、こんなイノベーションの案件をもらったことがあります。あるメーカーの研究所がクライアントさんでした。それまでの研究成果として素晴らしいシーズが出来た。そしてこれからパッケージ化のプロセスに入るときに依頼を受けたのです。「私たちはこのシーズについて24時間考えています。それゆえに違う見方をすることが出来なくなっています。普通、私たちが考えると、商品化とはこのようなものになりますが、それでは消費者の期待を超えることも出来なければ、いままでもどこかで見たことのあるようなものにしかなりません。その壁を越えたいのです」。

ここでのイノベーションとはクリエイティブ・ジャンプだとも言えそうです。つまり、よく見慣れたものに違う見方をする力、または異質な何かと何かを組み合わせて、新しい概念を生み出す力。その結果、消費者(顧客)は目の前の新製品や新サービスに「驚き」を覚える。意外性と言っても良いでしょう。ここにイノベーションを見つけるのです。

私がお手伝いするイノベーションはいつもこのタイプのものです。通常、オープン・イノベーション会社と一緒になって仕事は進みます。約1ヵ月から2ヵ月のうちに、そのようなクリエイティブ・アイデアを50~100くらい提案します。それくらいの数の質の高いアイデアを生み出すために、オープン・イノベーション会社が抱える、約30万人のクリエイターに「お題」を出します。例えば「電動歯ブラシでのオーラルケアに革命を起こしてください。インターネットに繋がる電動歯ブラシとはどんなものか。それはあなたの生活をどのように便利にしてくれますか」「今日の社会ともっと調和できる保険会社のサービス、ソリューションとはどのようなものか。あなたにとって本当に役立つ保険会社を発明してください」など。このように良く見慣れた何かを再発明してもらうお題を出します。

質の高いクリエイティブ・アイデアを多く集めるには、クリエイターに興味を持たせるようなお題にすることが重要です。これはコミュニティ・ブリーフでの最大の課題です。イノベーションを生み出すようなクリエイターは基本、マーケターではないのでビジネス用語でブリーフしても大して興味を持ちません。その代わりに生活者用語で語るとノッてきます。さらにクライアントの課題を社会との関係性のなかで捉え、社会を変えていくような大きなテーマとして見せると、もっと燃えてくれます。「あなたのクリエイティブでこんなにも重大な問題を解決してください」とお題を出すことです。クリエイター冥利に尽きるし、なによりこの重要な問題の解決に役立ちたいと、彼らは考えています。

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