プロジェクトを成功させるもの
配信日:2018年04月11日
新製品の市場導入、リブランディング、なんにせよプロジェクトを成功させるには「熱」が必要です。プロジェクトメンバーがその仕事に没頭してしまうような何か。これを「熱」と言います。熱のないプロジェクトは社内を巻き込むことが出来ません。社内が巻き込まれないものにどうして社外(顧客)が巻き込まれるのか。プロジェクトメンバーがワクワクしないものにどうして周囲や顧客がワクワクするのか。熱のないプロジェクトは冷めたピザのようなもので美味しくないし誰も食べよう(買おう)とはしないのです。
では熱はどのような要素で成り立っているのでしょう。最初に思い浮かぶのは「危機感」という言葉です。いまのままではヤバいという想い。プロジェクトや会社の改革が失敗する大きな原因は危機感の欠如、または認識不足にあります。「いまのままでもなんとかなるのではないか」「これまでもそうしてやってきた」。このような甘い認識を昔から「ゆでガエル現象」として聞いてきました。しかし自分がゆでガエルだと認識できる人がどれくらいいるかというと疑問です。ひととは変化を嫌うものだし、新しい行動に移ることすら容易でない。また社内ではそれが常識になりすぎていて危機自体を認識できないこともあります。ある意味、危機感とは外部の目から指摘されて初めて気づけるものなのです。
一方、危機感は行動の原動力でもあります。強烈な痛みを感じた時に、ひとは覚悟を決めて行動します。痛みが強ければ強いほど、そこからいますぐ離れたいと思うものなのです。よってまずチームで共有するのは「耐え難い痛み」と言っても良いでしょう。オオカミ少年になってはいけないけれど、そのような痛みを社内で意図的に概念化・言語化することも必要です。
熱を生み出す要素の二つ目に思いつくのは、危機を回避してこのような将来を実現したいという「将来への渇望」です。こちらは「痛み」に対して「快感」に近いものです。将来の渇望に「売上目標」を挙げることもありますが、問題なのは果たして本当に本音ベースで売上数字自体がモチベーションになるかということです。もちろん業務上の理由で、または実質的にそれが目標であるという理由から数字を挙げることは理解できますが、数字自体をモチベーションにできることは稀なようです。モチベーションには数字ではない感情的なコンテンツが必要です。
チームメンバーや、あなた自身がやりたいことは何か。そこには楽しさやワクワクする何かがあるはずです。よく組織としての目標を共有すると言いますが、それ以上に効果があるのは「このプロジェクトを完成させたらどんな自分になっているか」という、メンバー各人の自己実現につながるものでしょう。結局、ひとは自分のことに一番関心があります。20代で大きなプロジェクトをやり遂げたという「キャリア形成」や、プロのビジネスパースンとしての「自信を得ること」などが分かりやすいのではないでしょうか。プロジェクトはたしかに会社のものではあるのですが、その仕事が「どのように自分の成長を促進するか」に多くの関心はあります。それをしっかり伝えるのもプロジェクトリーダーや経営者の役割です。
最後にあるのは「主体性」、当事者意識でしょう。自分の手で何かを変えていくのだという自覚。自分でハンドルを握っていること自体を喜べる資質。そのようなすべての問題を自分ごと化できる体質でもあるのですが、実際のプロジェクトでは次のようなことのほうが大事です。
プロジェクトが進めば進むほど結果が出てくる。それは良い結果もあるし悪い結果もあります。また「結果が出ない」という結果もあります。それが一番多いかもしれません。そんな時に「こうきたか。どうやって変えようか」と思えるかどうか。そう思えるなら、そして実際に取り組めるならプロジェクトは更に熱を増します。一方、ここで立ち止まってしまうようだと、とん挫します。私はブランド・マネージャーの頃から「必ず問題は解決するのだ」と信じて仕事をしてきました。すると必ず助けてくれる人がいました。たいていは自分の知らない方法や違う考え方をもたらしてくれたものです。
ちょっとダメだとすぐに止まってしまうようではまだまだです。あきらめてはダメなのです。失敗だったと思ったら失敗なのです。どのような結果が出ようと、または結果が出ないという結果になろうと、それはプロセスの途上でありその先には必ず成功が待っているのだという信念が必要です。主体性、当事者意識とは仕事の采配を振ることのみならず、自分をどれほど信じられるかという楽天性や祈る心でもあるのです。