はだかのインサイト

はだかのインサイト

配信日:2024年12月18日

SNSが広がり、誰もが日常的に写真や動画を投稿しています。旅行先の絶景、おしゃれなカフェでの一杯、友人たちと過ごす楽しい時間。そんな投稿が溢れるSNSの世界で、私たちは一体なぜ「素敵な写真」をアップするのでしょうか?表面的な答えは簡単です。「楽しいから」「共有したいから」「つながりを保ちたいから」。しかし、本当にそれだけでしょうか?

SNSに素敵な写真をアップする理由。

それは「自分を素敵だと思ってほしいから」ではないでしょうか。この仮説を口にすると、多くの人は否定するかもしれません。「そんな浅はかな理由じゃない」「ただ楽しいからやってるだけ」と。しかし、行動を観察し、心理を掘り下げていくと、私たちもまた、自分を魅力的に見せるために写真を投稿しているのではないかと感じます。まるで雄のクジャクが羽を広げて、雌のクジャクにアピールすることと同じではないでしょうか。つまりインサイトの前提には「他者や周囲から自分がどう見られるか」、あるいは「性」という人間の動物としての本質があるように感じます。

人間は社会的な生き物であり、他者からの評価を気にする

SNSは、その評価を即座に得られる場です。「いいね」やコメントは、自己の価値を確認し、他者とのつながりを感じる小さな証明書になります。だからこそ、多くの人が素敵な瞬間を切り取り、スマホの機能を通してもとの写真を磨き上げ、編集して共有する。その裏には「きれいだね」「素敵だね」と言われたい欲求が隠れているのです。企業が欲しいのはこういう「本音のインサイト」です。

本音過ぎる「はだかのインサイト」

しかし、この本音は本音過ぎて「はだかのインサイト」といえるかもしれません。誰もが心のどこかで感じていても、それを直接的に認め、他者に「そうです」と言うことは憚られる。「ただ楽しいから」と建前を保つ。それは、自分の行動が他者へのアピール、クジャクで言えば求愛であることを認めるのが恥ずかしいからでしょう。ゆえに素直に「自分を素敵だと思ってほしいから投稿している」と正直に答える人はほとんどいないでしょう。結果として、企業が得られるのは「楽しいから」「共有したいから」という建前、つまり「服を着たインサイト」です。こうした表面的な答えに依存していては、どれだけリサーチを重ねても消費者の真の動機には迫れません。

発売当初、インスタントコーヒーが売れなかった理由

インスタントコーヒー

この点で思い出されるのが、アメリカでインスタントコーヒーが伸び悩んでいた際の話です。当時、メーカーはインスタントコーヒーの手軽さを売りにしていましたが、主婦層の購買が伸びませんでした。調査を進める中で明らかになったのは、主婦たちが「手抜き主婦と思われたくない」という心理を抱えていたことです。インスタントコーヒーを選ぶことは、自分が家庭を大切にしていないと見られるリスクがあると感じていたのです。はだかのインサイトそのものです。この背景には、家庭内での役割をしっかり果たすことが主婦の自己イメージとして強く求められていた時代背景がありました。つまり、消費者の本音は「便利さ」ではなく、「自分がどう見られるか」という社会的な価値観に深く結びついていたのです。

どうすれば本当の「はだかのインサイト」にたどり着けるのか?

まず、消費者の行動観察や背景情報を重視することです。消費者がどのような写真を投稿し、どのタイミングでそれを行うのか、行動パターンを丹念に分析することで、表面的な言葉に現れない心理を推測する手がかりを得ることができます。また、インタビューにおいても、直接的な質問ではなく、間接的な問いかけや自由に話してもらうことで、隠れた動機が浮かび上がることがあります。

インサイトは「洞察」である

何より重要なのは、「インサイトは完全な答えではなく洞察である」という理解です。インサイトは文字通り洞察(インサイト)に終わるものかもしれませんが、その曖昧さ自体がリアルさの表現であり「価値」のようにも思います。本当のインサイトとは、データや言葉の裏に隠れた、人間らしい本音や欲求を感じ取る力です。

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