ブランド・エッセンスについて
配信日:2024年6月21日
今日はブランド・エッセンスについて話しましょう。ブランド・エッセンスとは「ブランドの本質」と言っても良いでしょう。つまり「このブランドとは何か」ということです。これは言葉で聞くと「なんだ、そんなことか」と思うかもしれませんが、意外と深いものがあります。つまり「本質」とは何かに通じます。本質とは「変わらないもの」です。例えば「水」の本質は「H2O」という分子構造です。水が液体のみならず、気体になっても固体になってもH2Oであることは変わりません。逆に気体、固体、液体のH2Oは「現象」と言います。現象は本質の対義語で「変わりゆくもの」となります。目の前のブランドの本質とは何か。「変わらない」を念頭にブランドを定義するとどうなるか。「このブランドとは何か」を「私とは何か」に置き換えて自問してみてください。なかなか深い質問だと思います。
実は先週「本質」という言葉について、全く別のところで3回も話す機会がありました。もちろん、どれも「このブランドとは何か」です。それもこれも、最近のマーケティングはSNS広告がどうの、何をしたらもっと売れるかといった「やり方・HOW」の話が多い。しかし自分とは何かを置き去りにしてHOWを考えても、それは付け焼刃にしかなりません。そもそも「自分が何なのか」を忘れてしまっているところがあるのではないかと思います。僕が話をした場所でもそのようなプロモーションの現状があって、こんな「そもそも論」の話をしていたわけです。正直、HOWは後から考えればいい。その前に「自分とは何か」をしっかり知らなければ、しょせんはうわべだけの「一貫性を欠いたマーケティング」しかできないわけです。これは僕が企業で働いていた昔からよく上司に言われていたことだったけれど、デジタル技術が進み、マーケティング手法が次から次に進化をしていくなかで、いつのまにか軽視されるようになったのではないか。または忘れてしまったのではないか。それが昨今の、手法ありきのデジタル・マーケティングの現状のように思います。
ただし、自分が何者かを言語化するのは決して簡単ではないのも事実です。だからブランド構築に熱心な企業では日常的な会話のなかにも「我が社とは」「このブランドとは」という熱い議論があるものです。社長から現場担当者まで「おもしろがって」ブランドについて語る。そして何か提案があると「このブランドらしいね」「らしくないよ」という論争をしながら会社のなかでのコンセンサスが出来上がっていく。このプロセスは終わりのないものです。しかし重要なものでもあります。こういう議論の積み重ねが多ければ多いほど「このブランドとは何か」のメッシュ感が細かくなり、解像度の高いレベルで言語化されます。強いブランドがぶれないというのは、その結果だと言えます。