マーケティング・プロダクトとそうでないもの

配信日:2017年01月10日/p>

年末に地元のリカーショップで珍しい日本酒を見つけました。店頭POPには「お正月限定の希少品」とあります。いわゆるプレミアムの日本酒。ラベルも特徴的で、敢えて新聞紙に包んだだけのものなのに値段は2000円以上するものでした。いつも飲む銘柄と一緒に、試しに1本買ってみることにしました。

家に帰って飲んでみて思いました。「これはマーケティング・プロダクトだな」。特徴的な吟醸香はするものの、大して旨くもなく作りの中途半端が手に取るようにわかる味でした。そのような実態を隠すために、わざわざ新聞紙で包んで手作り感や希少性のイメージを作ったのでしょうね。正直、残念でした。その時に思ったことは「この作り手は“この程度でいいでしょ”と思って作ったに違いない」というもの。そういう「売ることを目的に作った製品」をマーケティング・プロダクトと名付けました。

「この程度でいいでしょ」という仕事は、どこか消費者に対して背徳的な感じがします。もっと言うと消費者の存在を軽く見るというか、消費者自身の価値を損なう感じです。消費者に見抜かれてしまう手抜き。それでは自分が大事にされていないように感じます。すべてではありませんが、最近ですと「プレミアム」という言葉はこれに近い感覚があります。「プレミアムと書いてあるから、これでいいでしょ」と言われているようです。プレミアムという言葉のついている商品はたくさんあるけれど、多くは名ばかりのプレミアムであって、実態はスタンダードに限りなく近いのではないでしょうか。

一方、私が最近、注目している言葉は「ラグジュアリー」または「ラグジャラス」という言葉です。この言葉は価格帯で言えば、かつてのプレミアム・クラスか、もう少し上のクラスかと思います。しかしこの言葉には「その人のためにカスタマイズした心配り」のようなものを感じます。つまり「消費者をリスペクトし大事にしてくれる」感覚です。様々なサービス業ではこれこそがプレミアムになっていることはご存じのとおりかと思いますが、マスプロダクトでもそういうものを見かけます。

例えば、私のクライアント、オラクルという化粧品ブランドはまさにこれです。コンポーザー(処方開発者)であり創業者の木下麻純(ますみ)氏はそれまでの化粧品の組成物に不満を持っていました。「なぜ、このような成分のものがオーガニック化粧品などと言ってもてはやされるのか」世の中では名ばかりのオーガニック化粧品や自然派化粧品が溢れ、その結果、消費者は肌トラブルの問題を抱えることになりました。

「もっと人が本来持つ肌の力を引き出すような化粧品はできないだろうか」。木下氏の興味は植物のエネルギーにありました。過酷な環境の変化に耐え抜き、地球上で極めて長く繁栄し続けている植物。そのエネルギーをスキンケアに活かせないだろうか。木下氏は植物が生体にもたらす効果、肌本来の力を引き出し偏った肌質を整える理想の成分を独自に研究しました。やがて植物が部位ごとに特有のパワーを秘めていることに着目し、それらの相乗作用が発揮されるように調合、最終的にスキンケアに応用したことがオラクルの誕生へとつながりました。創業から十数年で年間売上は十数億円ほどになりました。たった一人の女性が作り上げたブランドとしては十分ではないでしょうか。

どのような製品であろうと、顧客にまっすぐ向き合う姿勢や品質、作りにこだわりを持ったものこそ「ラグジャラスな製品」だと思います。フェイクのプレミアムを謳ったマーケティング・プロダクトではなく、消費者をリスペクトする製品。もっと言うなら「消費者に真摯な製品」。私たちはそのような仕事を目指したいものです。

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