コーポレイト・ガバナンスについて<2>

配信日:2023年11月29日

オープンAIを解任されたサム・アルトマン氏が同社に復帰しました。「最高経営責任者(CEO)を突如解任された米オープンAIのサム・アルトマン氏が4日後の21日、CEOに復帰した。一時は米マイクロソフトに入ることを決めたが、オープンAIの社員らが同氏の復帰や理事(企業の取締役に相当)の辞任を求めるなど、事態が激しく動いた(日経新聞11月21日)」。実に4日間の解任・復帰劇でした。僕も先週のメルマガで解任を書いて、次の日には復帰の記事を読み、思わず唸りました。今回の復帰劇の決め手はずばり「従業員」でした。770人の社員の90%にあたる730人が「アルトマン氏を復帰させなければ会社を去る」と言ったことに対して理事会(取締役会のようなもの)は解任の決定を取り消したわけです。

コーポレイト・ガバナンスのステークホルダーのなかでも「従業員」の影響力が顕著に現れた事件だったと思います。同時に人材、AIにかかわるような高度人材の争奪戦という見方もできるかなと思います。事実、主な移籍先のマイクロソフトの株価は上場以来の最高値を更新したようです。アルトマン氏の移籍に続く多くの頭脳を取り込むことで、マイクロソフト社のAIの取り組みが加速されると予測されたに違いない。他の会社でも、例えばセールスフォース社のマーク・ベニオフCEOは「履歴書を送って下さい。セールスフォースのAI研究チームに直ちに参加させます(日経新聞11月22日)」とXに投稿して呼びかけていたようです。一流の人材を取ることがいかに難しいかに頭を悩ませる企業にとって、こんな大量放出の状況はありえない。異常な4日間だったと言えます。

あらためて「情報開示」について考える機会でもありました。そもそも解任の背景には「アルトマン氏が数週間前に大型の資金を調達しようとしていたが、オープンAIのためか社外の活動のためか分からなかったことが理事会の懸念を生んだ(英フィナンシャルタイムズの記事を日経新聞が転載。11月22日)」があるようですが、本当のところはよく分かりません。理事会もそれならそうとちゃんと情報開示すればよいのに、そうしなかった。「問題は理由を十分に語らなかったことだ。理事会には、他者に貢献し効率よく社会を良くする「効果的利他主義」の立場をとるメンバーが複数いた。彼らの目に、アルトマン氏の言動のどこがおかしいと映ったのか。肝心な説明がなされていない(日経新聞11月22日)」。つまり情報開示の視点での問題も指摘されています。今回の騒動はこれで終わりかもしれませんが、これが前例となって今後、同様の企業統治の事件は増えるのではないかと思います。

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