応援したくなるブランド・ストーリー

配信日:2023年10月11日

11月3日に東京・有楽町で(一財)ブランドマネージャー認定協会の「第11回公開シンポジウム」が開催されます。当日は毎年好評の事例コンテストがあります。ブランドの実務家による実践事例、その成功のヒントや発想を聞きます。そして新たなブランディングの実践へつなげていくことが目的です。僕は協会の役員なので、先週、その事例を決める選考委員を務めました。そもそも良い事例とは何か。一応、良い事例の選考ポイントはあるものの、個人的には「こころを揺さぶられる事例」が好ましいと思います。つまり発表者が突き付けられた課題、それに対する分析と決断、実行の過程にある葛藤や困難、どのようにそれを乗り越えたかの実話。このようなリアリティが魅力的に伝わるものを好ましく思いました。正直、成功事例ばかりが素晴らしいとも思わないのです。むしろ「まだ途上ですが、ここまで達成しました」という、「肩で息をしているような話」のほうが楽しいし、応援したくなります。

良いブランド・ストーリーにも通じる話かと思います。特にストーリーのために生み出されたフィクションのものでなく、実話、ノンフィクションのブランド・ストーリーがいいですね。先日、日テレ傘下に入ることになったスタジオ・ジブリ。ニュースを見て日本のアニメ業界の労働集約性、賃金の安さ、後継者・人材不足など「本当に大変だったのだな」と、僕も認識を新たにしました。しかしジブリのブランド・ストーリーはまさしく宮崎駿さんと故・高畑勲さん、そして鈴木敏夫さんの物語そのものです。「ジブリの誕生は1985年。「アルプスの少女ハイジ」などテレビアニメを手掛けていた宮崎氏と故・高畑勲氏を中心に予算やスケジュールに縛られない高品質な映画作りを目指して発足した。劇場公開を前提とした長編アニメ専門のスタジオは世界でも珍しかった。その特徴は圧倒的な作品の作り込みにある。時代などを反映したストーリーと、細部までこだわり抜いたアニメーションは幅広い世代のファンをつかんだ。2001年公開の「千と千尋の神隠し」は翌年、ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を獲得。アニメの枠を超えた芸術性が高く評価され、世界での地位を確固たるものにした(日経MJ10月8日)」。

成功ストーリーとは、まず困難があって初めて成立する。こんな風に考えれば、僕たちの日々の生活に起こる煩わしさや苦労も「成功の前提」と捉えられるかもしれませんね。人も含めて、どんなブランドも素晴らしいブランド・ストーリーを描けそうです。更にはそのストーリー自体が顧客や従業員との心理的つながりを生み出し、何かのきっかけで誰かにしゃべりたくなるようなものなら伝説になるでしょう。

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