イノベーションと戦略思考
配信日:2023年9月13日
先月、東急エージェンシーさんに招待されて渋谷QWSにて、ある日本の食材をどのように広めるかのワークショップに参加しました。食材は東北産・生キクラゲ。生産者の会長さん、その支援をしている方々、そして食品メーカーさんやコンビニなど流通企業さんたち数社が、総勢40人近くいたでしょうか。正直、僕はこれまでの人生で「キクラゲ」について3分も考えたことはありませんでした。「博多ラーメンにトッピングされている、あの黒い細切りのヤツ」くらいの認識です。ましてや「生キクラゲ」とは珍しい。この稀有な商材を題材に「商品開発」「食べ方提案」「キャラクターやPR戦略」などを17時まで行いました。グループに分かれ、試食しながら意見を出し合い、最終的にいろいろなアイデアが各チームから出て面白かった。ワークショップ終了後、渋谷Food Show(大型スーパー)に行き、生キクラゲを買って帰りました。この日の夕食は「生キクラゲと豚肉の卵とじ」。それまで知っていた乾燥キクラゲとはまた違う美味しさです。辛口の純米酒に良く合いました。笑
今回はイノベーションの話をしようと思って、このようなトピックを紹介しました。生キクラゲにしても、世の中一般のキクラゲが「乾燥」である以上、世間にとって新カテゴリー、イノベーションだと言えます。しかし生産者の方々にとっては、あまりに身近な存在ゆえにそこに気付けないのが現状かなと思いました。企業でもこのような例は大いにあって、第三者から見たらイノベーションなのに「あまりに身近で、その価値に気付けない」。だから今回のような部外者を入れたワークショップは有意義なのですね。特にワークショップで出される設問が大事です。ここに外部の視点が入ると「良い設問」が出来ます。良い設問とは「外部だからこそ見える本質を突いた質問」です。正直、内部の設問は近視眼的で「同じところをぐるぐる廻り、いつもと同じ答え」「しかも戦術的アイデアに終わる」ようです。今回の生キクラゲでは最初に「乾燥キクラゲに対して生のポジショニングはどうあるべきか」「誰に対してどのような価値を訴求するか」を僕らのグループでは設問としました。販売活動に入る前の戦略を考える設問です。これを決めれば、テーマとして出された「商品開発」「食べ方提案」「PR」などは自ずと見えてくるものです。
東急エージェンシーさんによると、渋谷QWSはこのようなワークショップをよく開催しているようです。僕は今回、たまたま招待されて出席したのですが、こういう場所からいろいろなイノベーション、特に社会課題を解決するイノベーションが生まれるとしたら素晴らしい。そこで大事なのは俯瞰的に現実をみた「良い設問」でしょう。そしてイノベーションは非連続的アイデアを伴うものですが、実際には「現実の市場での課題や問題」がそこにあり、その打ち手として「非連続的アイデア」が良いこともあるし、「連続的な対処法で十分」なこともあります。イノベーションもまた戦略思考がベースにあり、その前提となる市場認識や、アイデアを誘発する良い設問が大事だと言えます。