トム・クルーズと戸田奈津子さん

配信日:2022年7月13日

トム・クルーズが再び「時の人」になっていますね。「米パラマウント・ピクチャーズの映画、トップガン・マーヴェリックの興行収入が世界で10億ドル(約1350億円)を突破した。新型コロナウイルス禍で映画館から離れた中高年を呼び戻し、中国やロシアでの上映なしに大台に乗せた(日経新聞6月25日)」。実際、映画館に足を運んだ方も多いと思います。僕も観てきました。とても良かった。ストーリーもただ面白いだけでなく、無人爆撃機の時代に戦闘機・パイロットという存在意義への葛藤や、マーヴェリックの退役寸前の良い枯(かれ)感もいい。それでいて年季の入った圧倒的な実力の差を若い世代のパイロットに見せつけるのもよい。そして亡くなったグースの息子との葛藤。いやはや同世代として共感できることが多々ありました。マーヴェリックや、最終場面で登場する旧式のF14戦闘機に自身を投影した観客も多かったのではないかと思います。それに一作目とオーバーラップするシーンや既視感を覚える映像は懐かしく、「これは一作目を観た中高年にはたまらないだろう」と思いました。そして興行的にも大成功。色々な映画作品が続編を作り、リピート客を引き込もうとしますが、今回のものは稀に見る大ヒットだったようですね。一番大きな理由は、この36年間に一作目を観た延べ視聴者数がDVDや動画配信も含め、おそらく圧倒的だったからです。

カンヌ国際映画祭でトム・クルーズ自身が語った「映画愛」、興味深い言葉があるので紹介します。「私は子供の頃、いつも好きな映画のタイトルや人生の目標を壁に書き出していた。そして、その目標に向かって取り組んだおかげで俳優になることができた」「18歳の時に、『タップス』のオーディションで小さな役をもらった。監督のハロルド・ベッカーに、観客がどう感じるかを想像して演じるように、と言われたことが演技の基礎になっている。私は映画学校には行っていないが、いろいろなことを現場で学んだ」「私は大きなスクリーンで上映するために映画を作っている。そのための撮影がたまらなく好きだ」「なぜ劇場に足を運ぶのか?現に今、私たちは一つになっている。話す言葉も文化も違うのに。それでも劇場であれば同じ経験を分かち合うことができる」「私は人間や文化、冒険に興味がある」(カンヌ映画祭リポートより抜粋。日経新聞5月22日)。トム・クルーズはスタントマンを使わないでアクションを撮るらしいのですが、その理由は映画館での大画面ではごまかしが効かないと知っているからでしょう。実際、彼はプライベートで戦闘機を持っているという。

トム・クルーズと親交が深い字幕翻訳家の戸田奈津子さん。今回のマーヴェリックを最後に引退されてしまうようですね。僕は戸田さんの大ファンでもあるので残念ですが、彼女もトム・クルーズについて興味深いコメントをしていますので、こちらも紹介します。「ひとによってちょっと名が出ると、ちょっと意地悪になることや鼻が高くなることもあるけれど、全然そういうところがなくて、とにかく本当にみんなに平等に、みんなに優しいんですよね。トクになる人だけじゃないのよ。例えばスタッフの隅々にまで優しくて、あの笑顔でしょ。本当に分け隔てなく、それは素晴らしいことじゃないですか。そこが本当に魅力でしたね」「大スターってもちろん才能も有るんだけど、やっぱり努力なのよ。トムなんてもう本当、努力の人なのよ、このひと。才能って、私はあまり生まれつきの役者の才能というのはほとんどないと言っては失礼だけれど、でも努力。この人は」(日テレニュース7月4日)。

トム・クルーズと戸田奈津子さん。親子ほど年の差がありますが、僕にとって2人はまさに「ビールと枝豆」、いや「シャンパンとキャビア」のような関係でお互いの仕事を高め合う最高のパートナー。仕事を超えた友情で結びつく、本当にステキなプロフェッショナル同士ですね。そして2人ともハツラツとして、かっこいい。60歳のトム・クルーズと86歳の戸田奈津子さんを見ていると長い人生に勇気が湧いてきます。

▼【参考】2019年に書いた戸田奈津子さんの話です。▼
メルマガ 2019年10月9日【一流の人ほど頑張るワケ】

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