アフガン情勢から読み取れること
配信日:2021年8月25日
アフガニスタンの混乱は日本にとって他人事ではないように思います。米軍の撤退。過去20年、仮にもアフガンは米軍に秩序なり治安なりを守られてきた。この状況は日本が1945年以来、東アジアでの地政学的な秩序を守ってもらってきた状況に符合します。しかし最近の米国は国力の低下も言われているし、オバマ政権時代には「世界の警察ではない」との発言もありました。今回のアフガンでもバイデンさんの声明が気になります。『アフガン軍が自国を守れない、もしくは守る意思がなければ米軍が駐留しても意味がない(日経新聞8月20日)』。天は自ら助くる者を助く。米軍はアフガンに愛想を尽かしたのだと思いました。
米軍の傘に守られているのは日本も同じです。だからすぐさま沖縄の在日米軍を思い浮かべたものです。台湾も韓国も同じ。中国と台湾を巡って東アジアは緊迫しつつありますが、「もし台湾軍に守る意思がなければ・・・」という一文にも置き換わる。米軍はいついなくなるとも限らない。撤退は速い。冷戦後の秩序は超大国・米国を前提にしていたけれど、その考えを変える時に来ているのかもしれません。日本も平和を自力で達成していく発想の転換がいるのではないか。
「平和ボケ」はしばしば日本人が日本を揶揄する言葉として使われますが、僕は嫌いではありません。むしろ、平和ボケでいられるくらいのほうが「緊張した日常」よりもよっぽど好きです。でも本当の平和ボケとは何だろうか。こう考えた時に「変わる時に変われないメンタリティ」ではないかと思います。戦争のような生命にかかわる話に限らず、様々な業界で起きている変化もまさに「業界平和ボケ」の結果ではないか。
聞いた話ですが、書籍出版の業界は面白くて、本が売れなくなっていった2015年頃、「とにかく出版点数を増やす」という現象が起こった。本来であればデジタル化の流れに沿って対応をするべきところ、紙での書籍をとにかく出したというのです。これは書籍流通の特徴である取次制度に理由があり、出版社から取次に出荷された時点で現金が入ることが魅力だった。結局、多くの本は返品されるのですが、返品率よりも出荷率を高くすれば経営は回っていくわけです。結果、多くの出版社がデジタル化に遅れた。出版は一つの事例に過ぎませんが、新興勢力にやられている業界ではどういうわけか「変わらなければいけないタイミングで変れず、逆にこれまでのことに固執する」傾向にある。これは慣性の法則のように見えるけれど、慣性よりも防衛本能に近いように思います。