ワシントンの春

配信日:2021年1月13日

先週の連邦議会議事堂乱入事件はトランプによるクーデター(武力による政権の転覆)との見方が強いと思います。トランプ本人は乱入した支持者に対して「凶悪な攻撃で怒りを覚えている。あなたがたは米国を代表しない」と言っているものの、マイクを持って扇動する姿は首謀者そのもの。結局、事態が収束に向かったことで自己保身のコメントを出すあたり、彼のマッチポンプぶりが見られます。「陰謀論」もささやかれていますが、起きた事実だけ見れば、いまやトランプは大統領にして「民主主義の脅威」とみなされても仕方ないでしょうね。

今回の騒ぎもパーラーなどSNSを通じて実行され、10年ほど前の「アラブの春」ならぬ「ワシントンの春」を彷彿させました。SNS各社はトランプのアカウントを永久凍結する適切な対処をしたと思いますが、これがアラブの春の時は「SNSのおかげで民衆は革命を達成した」と絶賛されたことを思うと「SNSの評価も真逆になる」と知りました。目の前で起きている破壊行為を「革命」と捉えるか「クーデター」と捉えるか、しかもそれが「自国(自分ごと)」か「他国(他人ごと)」かによって評価が変わる。

クーデターというと2・26事件を思い出します。1936年2月26日に皇道派の青年将校が起こした事件で、1400人ほどが首相官邸や警察庁を占拠。高橋是清や斉藤実が殺害されています。その背景には昭和恐慌、腐敗政治への怒り、農村漁村の窮状や身売りなど貧困がありました。「君側の奸」、天皇の名を借りて悪い政治を行う連中は許せんとやったのですが、結局、天皇から反乱部隊・朝敵と言われ、わずか4日で収束。しかし2・26事件によって陸軍内のパワーバランスは皇道派から統制派に移ることになります。その結果、日本はファシズムの道を進むことになった。

アラブの春は2010年から2012年にかけてアラブ世界で起きた大規模な反政府デモです。もともとはチュニジアのジャスミン革命がはじまりで、最初に飛び火したのはエジプトでした。当時、ムバラク大統領が独裁体制を築いていました。その独裁政権に対するデモ活動が激化。結果、ムバラクは国軍最高会議に権限を委譲し本人は軟禁、独裁政権は打倒されることになりました。さようにイエメンのサーレハ大統領(独裁政権)、リビアのカダフィ大佐(独裁政権)、シリアのアサド政権も次々に打倒されました。しかし現在はどうなっているかというと、あまり良い結果にはなっていません。エジプトは結局、軍事政権になったし、イエメン、リビア、シリアは内戦状態に陥っています。その理由は宗教的なイデオロギーの対立や内戦に便乗する他国の介入(シリア)、または単純に次期政権への不満などもありました。衆愚政治という言葉すら思い出させます。

結局、クーデターというのは成功しない。力量不足の人間でも偶然と勢いで権力を握った事例はありますが、そうやって得た権力が長期に渡って維持されたことはないようです。今回の米国議会乱入もそうだと思いますが、仮に成功したとしても、おそらく同じ結果になったと想像します。歴史を学ぶ価値をあらためて考えます。

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