近頃、意識的にしていることがあります。
配信日:2020年10月21日
東京ディズニーリゾートのダンサーの話。コロナが予想以上に長引き客数が半減しているなか、9月以降、経営陣は600人近くのダンサーに園内の窓口業務など別部署に異動するか、手当てを受け取って退職するか、手当なしで契約期間を終了するか選ぶように提示しました。ダンサーにとってTDRで踊るのは夢そのもので「狭き門」。しかし今回は半数以上が退職を選んだと言います。「踊れなくなるなんて、私にはムリ。解雇のようなものです(日経新聞10月17日)」この記事にこころが痛みました。ダンサーも経営陣も辛かったと思います。ダンサーにしてみたら配置転換などで雇用が確保されれば、当面の生活には困りません。しかし彼らの多くは退職を選んだ。つまり生活やお金のため以上に「ダンサーであること」「人に感動を与えること。すごいねと褒めてもらえたり、達成感を持てること」が大事だった。働く喜びですね。それを分かりながら選択肢を示した経営陣もどれほど辛かったことかと思います。
中目黒にある美味しいイタリアン。小さな店ですが本格的なトスカーナ料理を出してくれていました。コロナ下でもしばらくレストランを開いていましたが、先日たまたま通りかかると「生ハムとワインのテイクアウト専門店」になっていました。店内の様子も完全にテイクアウト向けになっていてイートインはゼロ。テーブルは一か所に集められて在庫置き場になっていました。どんなにGo to Eatキャンペーンでお客さんが来ると言っても、ちっちゃな店で席数が半分では十分な売上には程遠い。オーナーシェフも辛い選択だったと思います。レストランを経営する以上、どれほど料理をしたいかと思います。しかし従業員や家族を喰わせていかなければならない。時には働く喜びを犠牲にしてでもお金や生活のために仕事をしなければならないことがある。これは例えば、シングルマザーの派遣社員、介護の親を抱える契約社員などにも当てはまることだと思う。
「働く喜び」とは得意なことでお客さんや仲間を喜ばせ、感謝され褒められ、認められることだと思います。「周囲から承認」してもらえること。これは働くことでしか得られないものです。ダンサーやオーナーシェフはそのような楽しみを奪われた人たちでしょうね。一方で、どのような目的で仕事をしている人にも、仕方なく生活のために頑張っているひとにも、ちょっとしたことで感謝の言葉をかけたり、やってもらった仕事を褒めることはできます。会社のなかでも、そういうことをしている職場はエンゲージメント(その組織での働き甲斐)が高いように思います。
そういえば、近頃、僕が意識的にしていることがあります。例えば宅配の荷物を持ってきてくれるクロネコのひとに、ちょっと大げさなくらい「助かります、ありがとうございます」を言う。例えばコロナ前もコロナのいまも、変わらずスーパーでレジ打ちをしてくれているパートの人に、日頃なかなか言う機会のない「こんな時でも頑張ってくれて、ありがとうございます」を言う。今度、病院に行く機会があったらお医者さんや看護師の人たちにもそうしよう。本来、僕はあまりそういう人間ではないですが、こんな時でも社会を下支えしてくれているこういう方々がいるから生活が成り立っているということを考えると、「ありがとう」を出来る限り伝えようという気になる。そしてどのひともすごく喜んでくれて、逆に御礼を言われたりします。目の前のひとに働く喜びを感じてもらうのは、いまのような時代、社会の雰囲気を良くしていく小さな活動かもしれないと思っています。