日本の競争力34位。
配信日:2020年6月24日
IMD(ビジネス・スクール)が2020年版の国・地域の世界競争力ランキングを発表しました。見たひとも多いのではないでしょうか。このランキングは雇用統計や貿易統計といった公式定量データと、公式統計では把握しづらい「マネジメント慣行」「ビジネス規制」「労働市場」「姿勢・価値観」等を約6,000人の経営幹部を対象に意見調査を行い算出したものです。そして、世界でいま最も競争力のある国・地域のトップ20は次の通り。
1位:シンガポール
2位:デンマーク
3位:スイス
4位:オランダ
5位:香港
6位:スウェーデン
7位:ノルウェー
8位:カナダ
9位:アラブ首長国連邦(UAE)
10位:米国
11位:台湾
12位:アイルランド
13位:フィンランド
14位:カタール
15位:ルクセンブルク
16位:オーストリア
17位:ドイツ
18位:オーストラリア
19位:英国
20位:中国
こうしてみると、大国のランクインは10位米国と20位中国くらいでしょうか。逆に、多くはシンガポールやデンマーク、スイスといった人口が500万人から1,000万人程度の国家が占めているのが特徴かと思います。参考までに東京が1400万人、大阪府が880万人。ちょうど大阪府くらいの「国家」が最も競争力があると思います。米国(3.3億人)、中国(14.5億人)の巨大国家と人口1000万人に満たないようなスモール国家の構図。この構図、マーケティング的にも納得がいきます。業界を席捲するような全方位型の大企業と専門特化・ニッチ型の中堅企業の構図。多くの場合、前者は体力勝負のチカラ技を得意とし、後者は革新性とスピードを得意技としています。国家の場合も同じではないでしょうか。米国と中国という2大企業とシンガポールなどの新興企業。いまは新興企業のほうが元気いい。企業も国家も体力勝負の場合は概ねコモディティ化したレッドオーシャンで、最終的には上位2社(米国、中国)までしか残れない。しかも米国10位、中国20位はもはや大きさや体力が勝ちパターンではなくなってきているのを示しています。逆に革新性とスピードの新興国家は強力なポジショニングを確立した高収益ビジネス、かつブルーオーシャンです。シンガポールや北欧が経済のみならず政治や福祉でも年々、評価が高まるのも納得がいきます。
では、日本はというと34位。これを同じように人口でみると1億2400万人で、全方位型にもニッチ型にもなれない中途半端なサイズ。GDPは世界3位で、米中相手に全方位では戦えない。一方、ニッチでいこうにも革新性やスピードで上記の新興国家に太刀打ちできない。何をやるにも大き過ぎて動きが遅いのでしょう。よってマーケティング的にはエッジの立っていない「ぼやっとした存在」といった印象です。どうして日本はこんなふうになってしまったのか。こんな話を先日、大学3年の子供と食事をした時にしました。もっとも食事をした理由はコロナ後の就活をどうしたらよいかという相談でしたが、話はどんどん面白いほうに流れていき、このランキングのことも話しました。一言でいうと、大企業病。おそらく日本は国家自体がサイズ的にも経営的にも身動きの取れない状況に嵌っているのではないか。いまの仕組みや制度を変えたくても、既得権やらなんやら、制度にかかわる者や、時には制度自体が意思を持ち変化やイノベーションを拒む。それが失われた20年とか、課題だ、課題だと言いながら解決できずに来てしまった原因ではないか。「大企業病は大きな組織には多かれ少なかれ、あることだよ」。国家のランキングとは別に、これから就活をするための企業をみる話ができたように思います。