10万円申請のこと、マスク回収のこと。
配信日:2020年5月13日
僕の住んでいる渋谷区では5月1日から特別定額給付金(10万円)の申請受付が始まりました。これまでコンビニで住民票を取るくらいしか出番のなかったマイナンバーカードがようやく役に立つ時が来たと思い、早速、やってみることにしました。しかしこれ、かなり難易度が高い。最初、パソコンでトライしたのですが、カードリーダーで挫折し、次にマイナポータルという初めて聞くアプリのインストールとパソコン同期で挫折し、その後、スマホで再挑戦しましたが今度は銀行口座の写真でスタートに引き戻され、更に「署名用電子証明書」という、意味不明の漢字が羅列された「何か」のパスワード(5回以上間違えるとロックされ、解除するには申請など必要で、ものすごい時間がかかる)に大汗をかき・・・とまあ、申請そのものがかなり難しい。これでは役所への苦情・問合せも殺到し、役所も余計な仕事が増えるだけという印象で、まったくもって、呆れるほどユーザーフレンドリーでなく、申請が完了した時にはどっと疲れが出ました。
マイナンバーカード、今回、初めてその価値を実感できるかと思いましたが、余計な仕事が増えた。これならアナログな書類を書くほうがましだと思いました。つまり、難しいマニュアルは区民(顧客)からの問い合わせを発生させ、役所側に新たなサポート工数が発生し、役所のコストを圧迫するという典型的な例かと思います。民間なら「こんな会社の商品はもう買わない」で終わりますので、企業努力で改善されていくのですが、役所はそれがないので改善も難しそうに感じます。
大体、国の仕事というのは民間、一般企業であれば普通にやることが普通に出来ない。アベノマスクも僕のところには未だに来ません。不良品の回収をしているのは知っていますが、それにしてもどうなっているのか。大変なのは納入メーカーや商社だと思います。今回不良品を出した時に政府のトップは「不良を出さないようにきちんと検査するように指示しています」というコメントを出すだけでした。納入に携わったメーカーや商社は肌身で感じていたと思いますが、トップが「指示しています」だけで不良が無くなるなら苦労しません。「具体的にどこに問題があって、何をすれば解決するのか」「そのための資源(ヒト・モノ・カネ)は十分か」「不十分ならどうするのか」までトップが踏み込んでいかないと、上から「指示」だけでは一向に解決されない。ここがトップの出番で、現場では決められませんから、放置すると不平不満になります。メーカーの人は苦笑していると思います。これが民間であれば市場品質事故ということで、かなり重い事故として扱われますし、対応のスピードも要求されます。そして、それがそのままコストに跳ね返ってきます。
一般論として民間のメーカーの立場で考えると、2回目の不良事故は致命傷になるので非常に慎重になります。生産現場はかなりのセーフティーネットをかけてきますので、マネージャーは責任を持ってGoの判断をくだすことが重要になる。これを現場に任せるとどんどん先延ばしされるか、コストがかさむことになります。よって、ここでも出口戦略が必要ですが、残念ながら規格大量生産では不良率をゼロには出来ません。生産ラインで発生した不良をいかにして市場に出す前に押さえ込むかしかない。それでも現実はゼロには出来ません。よってマネージャーは「市場不良率が何%であればOKとする」という基準を持つ必要があります。もちろんこれは現実の話で、現場の目標はあくまでも「不良率ゼロ、市場品質事故ゼロ」であるのはいうまでもなく、それを目指して仕事します。マスクの場合、顧客が政府(お上)だから、2回目の不良事故を出さないよう、慎重になっているのでしょうね。よって時間がかかると思います。問題は政府がそのような理解を持っているかどうかです。「何が何でも不良率をゼロにするように指示しています」では永遠に出てこないか、倒産覚悟で出すかという究極の判断がメーカー側に求められることになります。これが僕のところにマスクが来ない理由かと思います。