人間の天敵
配信日:2020年1月29日
新型コロナウイルス、かつてのSARS(サーズ)を思い出させます。国立感染症研究所によると、SARSは中国広東省で起こった非定型性肺炎で、「重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)」の名前で報告され、原因は新型コロナウイルスであることが突き止められました。2002年11月16日から、終息宣言が出た2003年7月5日までの8か月間、中国を中心に8,096人が感染し774人が死亡しています。
当時、香港の人たちが必死に無事を祈る姿がYahooニュースに取り上げられているのを見て、僕は「いつ収まるともわからない、原因不明、得体のしれない疫病」と恐怖を覚えたものです。しかしやがて終息。その決め手は起因病原体特定のためのWHOを中心とした各国の協力と「隔離と検疫」だったと言います。
隔離と検疫。非常に古典的なやり方ではありますが、こういう方法が一番良いのでしょうね。今回も武漢市、中国政府はじめ「隔離と検疫」を行い、米国や日本も帰国チャーター機の手配など大変結構なことで、今回の新型ウイルスも程なく終息してくれればと願っています。
人間の天敵、そんなことを考えていました。人間は食物連鎖の一番上にいて、生態系のなかでは敵らしい敵もいないように見える。しかし以前、アフリカでのマラリア発生を抑制する製剤を扱うクライアントさんとかかわり、「蚊」というのは人間の天敵だと知りました。南半球で蚊はマラリアを運ぶ「媒体」そのもので、なんと年間に80万人近くが命を落としている。SARSでも774人ですから、実は蚊による死亡のほうが圧倒的に多く、かつこの問題はあまり注目されることもないけれど、実は深刻なものだとわかります。
このクライアントさんが扱う製品は、蚊の発生場所の水辺、貯水池や公園の池などに散布すると蚊の卵を死滅させられるものでした。ただ、現地の人にとってマラリアはあまりにも日常的なこと過ぎて、(新型ウイルスのような)深刻さがないようです。これが製剤を扱うクライアントさんの悩みでもありました。事実、現地でのマラリア対策は蚊帳(かや)がメイン。「隔離と検疫」と同じく古典的でわかりやすいものです。
SARSや、今回の新型コロナウイルスなんかも、おそらく人間の天敵と認定して良いかもしれません。蚊が南半球での天敵なら、ウイルスは北半球での天敵。「新型」などと付くと強力な新手の出現です。しかし考えてみれば、天敵というのは自然の生態系のバランスを保つものだから、いまの人間の数というのは自然界から見て多いのだろうか。そしてある程度、バランスが取れたとしたら、このような新型ウイルスは発生しなくなるのだろうか。そんなことを考える一週間でした。