みんなが幸せになる組織
配信日:2019年11月20日
「みんなが幸せな組織」を作るにはどうしたら良いのだろう。最近では「離職率が高い」「若手が管理職になりたがらない」など人材にまつわる深刻な問題も噴出しているし、おそらく従来のモチベーション研修や社内公募制のような施策、または日々のOJTでは解決が難しいのが現実。しかし、「みんなが幸せになる組織」を作れれば、問題は一気に解決します。難しいテーマですが、僕のクライアントさんのなかには、こういう組織作りに成功しているところがあります。
その会社では執行役員クラス自らが「部下にしてほしいように振舞う」ことをしています。得意先との商談やミーティングはもちろん、オフィスのメンテナンスやコーヒーを淹れるといった、通常の会社なら執行役員クラスは絶対にやらないことまで、自らやります。最近では多くの企業で「部下からの評判」が出世の大きな要素になっていますが、この会社では部下のご機嫌取りをするわけではない。
彼らはこれを「サービスマンシップ」と呼んでいます。「わたしは部下も含めてチームに貢献する」「少なくとも自分のことは自分でする」。そんなふうですから、経営陣は誰もが、部下や若いひとたちから慕われています。結果、そういう精神や考え方の彼らを真似したくなるようです。「みんなのために働いている姿」がカッコいいから「あの役員のようになりたい」と願う。こうして真似することを「モデリング」といいます。モデリングの教育効果は凄まじく、これが代々繰り返されることで、組織の文化は作られます。
つまりトップ自らがお手本となって部下の望ましいモデルになることが幸せな組織を作るアプローチです。これまでは「会社として理想の人材はこうだから、そうなるように努力してほしい」「自律的な人材になってほしい」と部下を教育するのが普通でした。しかし望んでも部下はなかなか変わらない。一方、この会社さんでは「上司が部下に望むものを強要するのではなく、その望むものを自ら与える」「自律型の人材が欲しければ、自らが自律型人材として働き、部下に接する」ことをする。すると部下は上司の背中を見て自分もそうなりたいとモデリングをする。
興味深いのは、その執行役員の方々は「業務だからそうしている」という感じでもないのです。むしろ「部下に背中を見せることが楽しい」から、そうしているように見える。部下に要求し、部下から奪う感覚でなく、むしろ「部下に与える機会」と捉えているようなのです。
この「部下に与える」感覚、「貢献するセンス」そして「背中を見せる」感覚が幸せな組織、ひとがここで働きたいと思う組織を作るポイントではないかと思います。上の人間ほど現場や部下のために働く。しかも嫌々、義務感からではなく「与える喜び」を得る機会として、そう接する。部下を変える前に自分が変わる。そうすると部下も変わっていく。これが今日的なマネジメント・スタイルではないでしょうか。