横暴な上司やブラックな得意先が存在する意味とは?
配信日:2016年08月25日
日頃、懇意にしてもらっている研修会社さんに中途入社の男性が入り、ご丁寧にあいさつを頂きました。前の会社は食品会社で、大手の小売りチェーンを担当していたとのこと。「なぜ転職したのですか?」と尋ねると次のように答えてくれました。
「商品の在庫状況や品質に関して、その得意先から24時間体制で連絡がくるのです。しかも連絡をもらったら夜中でも出向かなければならない。さっき帰宅したばかりなのに電話が来て直ぐに出ていくこともありましたし、時には夜中に電話で罵倒されることもありました。そんな生活に嫌気がさしたのです」と。
実に率直なウソのない答えで、私も興味深く話を聞いていました。それにしても、いくら仕入先業者だからといって、24時間体制での呼び出し、ましてや罵倒するなど言語道断。ブラック企業そのものの実態に驚くやら腹立たしいやら。「買い手のほうが売り手より偉い」と勘違いしている典型的なパターンです。
またこのような得意先をそのまま許していた、彼の元上司(または会社自体)も大いに問題です。確かにこの得意先は非常に大きな売上であることは間違いないけれど、それとこれとは話が違うと言うものです。本人に限らず、社員は会社や上司のそういう態度を見ているものだし、そういうところから内部告発や社外への悪評がたつのです。
会社への不満というのは多かれ少なかれ、誰にでもあるものですが、彼のようにはっきりと辞める人もいれば、そうできない人もいます。もちろん、どうしたいかは個人の自由ですので私がいいの悪いのと言うつもりはありません。しかし、もしイヤでイヤで仕方ないのに我慢をしているとしたら精神的にも病んできますし、あまり良くないかもしれません。
ある懇意にさせて頂いている取締役から聞いた話です。彼も横暴な上司(創業経営者)のことで悩んでいて、それを同じ会社の先輩取締役に相談しました。すると先輩は自分の経験に基づき「お前はもう何かを頑張る必要はない。我慢しろ。それだけすれば無事に過ぎていく」とアドバイスをしたと言います。「それでその先輩はどうなりましたか」と私が訊くと「最終的にクビになりました」と答えていました。おそらく我慢ばかりで仕事にも気持ちが入らず、何かを頑張るわけでもなく、ただ嵐が過ぎるのを待っていたのでしょう。経営者もそこが気に入らなかったのです。
この話からの学びは「我慢するよりも行動するほうが良い」ということです。それもいきなり辞めるとか、内部告発するとか極端な行動ではなくて「いつでもこの会社なしでもやっていけるだけの腕を磨く」や「将来、本当にやりたいことへの時間的・体力的投資」をしておくことでしょう。主体的に自分のキャリアや人生を考えることですし、「腕を磨く」のはパーソナル・ブランディングの王道といえば王道です。「常に備える」ことが大事で、そのような人には横暴な上司や得意先でさえ、次のステップへ背中を押してくれる恩人に見えるものです。