英国のEU離脱について。
配信日:2016年06月29日
英国のEU離脱が決まり世界はもとよりイギリス国内が一番揺れているように思います。ニュースを見ていても離脱による様々な問題や将来への悲観論が圧倒的です。スコットランドはEUに残るなどの議論はありだとしても、ロンドンが英国から独立する用意があるとか、私には意味が分かりません。(例えば東京が日本から独立するとはどういう意味なのだろう?)
あれほど離脱したかったのに、いざ離脱が現実的になると困惑しているようで、正直、離脱派のひとたちも「どこまで本気だったのかな」と思わないでもありません。エスタブリッシュメントとマジョリティのせめぎ合い、シニア民主主義、アンチ・グローバリズムなど、いろいろと言われています。これをアメリカの大統領選になぞるコメントも出ていますが、そうかもしれません。
離脱派はこの問題について勉強不足だったかもしれないし、関税のことや外国企業の対英国投資などを考えるとデメリットは多いかもしれないけど、仮に残留派が勝利したとしても現在の鬱憤や問題は残るわけで、「主体的に変化を起こした」と考えるならば、もっと自分たちを誇っても良いように思います。
ここに「ひとの変化への心理」を読むことも出来ます。人は良かれと思って右へ行くと決めると、「右へ行くと決めた自分」を責めたがる。そして左に戻ると、「戻ることを決めた自分」をやはり責める。または振り子のようなもので、右へ行けば左を懐かしみ、左へ行けば右を懐かしむ。マーケティングの現場でも同じような力学はあって、「新しいこと」に対して総論では賛成しても各論では現状に留まりたがる(または本気で新しいことに取り組むには勇気がいる)心理に近い。
そのような心理状態を認めた時に私たちが打つ手は「かつての環境に戻る」ではなく、「新しい環境条件を前提にして新しい戦略を実行すること」です。英国も例外ではない。EUと距離を置く中で、主体的に今後の政策を決めればよいのです。これまでのEUのメンバーとしての自分ではなく、新しい自分を創造すればよい。簡単ではないが、それが彼らのやりたかったことでもあるはずだ。
今回のEU離脱が正しかったどうかは、かつてのソ連崩壊と同じように壮大な社会実験のようなもので、時間をかけて検証されるのでしょう。非常に興味深いものがあります。そしてEU離脱の混乱やデメリットは当分あるでしょうけれど、昔から世界情勢のバランス感覚に優れた国ですから、きっと新しいルールや秩序を打ち出していくに違いないと思います。世界もまた同様に、新しい条件のもとで新しい手を打てばよいのです。それが変化に翻弄されずに変化を乗りこなす術だと思います。