配信日:2015年7月15日
「クリエイティブのジレンマ」という概念をご存じでしょうか。特にデザイナーや広告業界に当てはまるものです。ご紹介しましょう。「忙しくなればなるほどクリエイティブ(創造的活動)が事務処理になる」というものです。
ある意味、どんな業界のどんな会社でもそうかもしれません。本来、お客さんを喜ばせるために工夫を凝らして仕事をしていたのに、忙しくなると「仕事をこなす」こと自体が目的になる。人によってはこれを「効率の追求」と言うかもしれませんが、別の人は「手抜き」と呼ぶでしょう。
なにより問題なのは、クリエイティブが事務処理になったら絶対に面白いものは出てこないこと。そしてそれが続くようだとその会社はおしまいだということです。クリエイティブのジレンマの厄介なのは、事務処理であろうとなかろうと、忙しさにかまけて仕事をしている気分になれることと、そのような自分たちの状況に何の疑問も持たなくなることです。
あるクライアントはここに警鐘を鳴らしました。毎日、朝の仕事を始める前の15分に「新しいこと」を考える習慣を取り入れています。机についていきなり今日の業務を始めない。その代わり、コーヒーを飲みながらぼぉーっとして「将来の仕事」「おもしろいこと」に思いを巡らすのです。
それは必ずしも会社の仕事ではありません。自分が独立した時の仕事かもしれないし、転職した次のキャリアでもあります。そのように今の仕事に過度に集中しない時間を許しているのです。将来、こんな仕事をしたいと考えることで「では、いまからこんなチャレンジを始めよう」と気づきます。つまり将来を思いめぐらすことが今の「真の課題」をあぶり出すのです。これを、この会社では「魔法の15分」と呼んでいます。不思議なもので、思いめぐらすことから未来は作られます。そういう意味では「経営ビジョンを描く」というセオリーはまったく正しくて、それが将来の成功をもたらすのです。
一体、私たちはどれくらい立ち止まって「自分や会社のビジョン」を描いているか。忙しさのなかに、どれほどそのような時間を意識的に持てているか。特にクリエイティブのジレンマに陥っていると思われる時は、これが必要ではないでしょうか。