配信日:2014年10月29日
私は経営コンサルタント業以外に、いくつかの事業会社の役員もやっています。そのなかの一つ、海外の酒類・飲料を扱う会社でのこと。ここはまだ出来たばかりの会社です。私は設立パートナーとして出資もしていますし、定期的なボードミーティングにも当然出席しています。
近々、ドイツから素晴らしい商品が入ってきます。日本の食品検査基準は厳しく、まだ輸入手続きの途中にありますが、必ず輸入できると信じています。この商品、本国ドイツでは有名な飲料ですが、日本では無名。しかしクラブや外国人が集まるバーを中心にニーズがあることは分かっています。さて、これをどのようにマーケティングするか。
業界での常識的な発想であれば「バーサプライヤー(料飲店を専門にした卸)に売る」となるのですが、私たちの考えは違いました。私たちが考えたのは「営業などしても展開力で勝ち目はないのだから、もっと別のことを考えよう」でした。私も含め、ボードメンバー全員が酒類業界の経験者です。経験者であっても現在は別の仕事をしており、その異業種での経験から出てきた答えでした。
「マスレベルの消費者とダイレクトにつながるにはどうしたらよいか」「既存の旧態依然とした流通チャネルに依存するのではなく、業界地図を塗り替えるようなチャネルとはどのようなものか」「価格競争に巻き込まれない販売方法とは何か」「値ごろ感を持って売ることが出来て、かつ我々もバーも十分にプロフィッタブルなコスティングはどのようなものか」「単なるウェブで売るというようなレベルのものではなく、もっと進んだデジタル・チャネルだとしたらそれは何か」「もしその仕組みを使うとしたら既存のアイデアで似たものはあるか」・・・。このような話題が私たちの興味関心です。
ここで、その回答を詳しく書けないのがもどかしいです。笑
しかし明らかに「新参者・弱者だからこそ発揮できる強み」を意識した戦略議論だったと思います。どのようなことでもそうですが、強みには必ず弱みが潜み、弱みには必ず強みを見出すことが出来ます。要は事実をどのように解釈するかという話でして、これを「現実歪曲力」と言っても良いかもしれません。
考えてみれば、現実を歪曲してみる力は貴重です。ここから「素朴な疑問」が生まれ、それに対しての回答がイノベーションになるのではないでしょうか。
この飲料会社でもそうですが、その他の私がかかわる事業会社でも同じような議論をよくします。どこでも共通するのは「“普通”は美しくない」という価値観で、それを面白いと感じるメンバーばかりだから、話していてわくわくするのでしょう。
普通はラクかもしれないけれど美しくない。どうせなら美しいことをしたい。時にはナイフの切っ先のように「危険な美しさ」もあることでしょう。しかし「戦略」とは、そもそもそういうものではないでしょうか。