配信日:2014年10月15日
コンサルタントをやっていて本当にありがたいのは、素晴らしい経営者と知り合えることです。そのようなご縁に感謝すると共に、できるだけお役に立ちたいと思います。
先日、クライアントの社長さんが定年退職され新しい会社にスカウトされました。今度の会社は香港資本のコングロマリットで、そこの特別顧問としてお仕事をされます。ちょうどご報告したいこともあり、霞が関の新しいオフィスに伺いました。
小一時間、ミーティングをして、その後ビルの1階にあるベルギービールのパブで1杯、飲みながら談笑しました。おもむろに私が尋ねました。「社長を辞めて変わったことはありますか?」もちろんです、とお答えになると話を聞かせてくださいました。
『社長をやっている時に一番気にしていたのは“社員や会社に迷惑をかけてはいけない”ということでした。例えば車の運転はしないようにしました。もし私が事故を起こして人を殺してしまったとすると、私は犯罪者になります。経営者が犯罪者の場合、会社は正常な経営を続けることができません。いまではそんな心配も無用となりました。
女性と2人だけの食事も控えるようにしました。よくアメリカであるケースですが、経営者と関係を持ち、それをセクハラなどで訴え、高額の賠償金を取られることもあります。いまではそんなことを気にせず、楽しく食事をすることが出来ます。
また社長になって、健康であるためにジョギングをするようになりました。健康でなければ仕事は出来ません。いまでは10キロを1時間程度で走っています。この前など、私が走っている横を、ハイヒールをはいたOLが猛スピードで抜き去っていき、地下鉄の駅に消えていきました。ビックリしましたよ・・・。それにしても、ジョギングは本当に楽しい。いまも続けています。これは変わりませんね』(拝聴した会話を私なりに短縮して掲載)
「社長になって不便なことも増えたけれど、それでも楽しかった。いまではそれも気にすることなく、今まで以上に楽しく働けます」とおっしゃっていました。本当に楽しそうにお話をされ、聞いている私も自分のことのように嬉しくなり、本当に清々しい気分でした。
実はこの経営者の方は、前職で社長をしていましたが、着任してしばらくの間、従業員がなかなか親しく喋ってくれなかったとおっしゃっていました。この会社はある大手商社の子会社で、経営者の方もその商社の出身でした。北米市場を中心に海外畑をずっと歩いていらっしゃり、出世コース、エリートでした。喋ってくれなかった理由は「親会社の商社から出向して社長になって、やがて親会社に帰る人だ」とみんなが思っていたからでした。
しかしそうではなく、この方は「商社を辞めて、この会社に社長として再就職した」のでした。「帰るところはない。ここが私の会社だ」みんなが驚いたと言います。それを従業員が知った時に、本当の意味でこころを開いたコミュニケーションが出来るようになったと聞きました。
最近、私自身がよく思うのは「ライフ・ステージを一つ上げる」です。この経営者の方を見ていて、あらためてそれを感じました。いつまでも同じ生活をしても良いのですが、「そろそろ今の生活に飽きたな」「そろそろ別のステージに上がりたいな」と思ったら積極的に動くことです。そのためには「自分の将来を不安視しない、楽観的なこころ」「起きることすべてにある“良い点”に目を向ける発想」が大事なのだと思います。それもこの経営者の方から学んだことです。