人は誰でも寝食を忘れて仕事に没頭する時期がある。

配信日:2014年3月11日

人は誰でも「寝食を忘れて仕事に没頭する」時期があるように思います。その時期は本当に仕事一筋です。食べたり寝たりする時間がもったいない、というかそれに興味がないほど仕事に打ち込む時期です。

人によっては、これがプロとしてやっていくための通過儀礼と言うかもしれません。私もその考えに賛成です。仮にも独立して仕事をしている立場で申しますと、私にもそういう時期が何度かありました。

最初のそれは、AGFでプレミアム・インスタントコーヒーのブランド・マネージャーを始めた頃です。ブランド戦略作りから新製品開発、市場導入のコミュニケーションから営業政策まで、はじめて本格的なブランド・マネージャー業務に取り組みました。

当時は、文字通り「右も左もわからない」状態での七転八倒です。ブランディングのことなど、もちろん机上の空論としてしか理解していませんでした。そのような状態で、上司であるマーケティング・マネージャーと延々と議論し、その上の上司であるマーケティング・ダイレクターから罵倒され、広告代理店に教育してもらい、営業からボロクソに言われ・・・とにかく大変でした。しかし、今思い出してもあの時ほど短期間に膨大な経験と学びをもらったことはないと思います。この時期は1年ほど続きました。

2度目の寝食を忘れた時期は、マキシアム・ジャパンという会社で臨時のマーケティング・ダイレクター業務をやった3か月でした。当時、私は転職したての30歳でした。私を取ってくれた上司のマーケティング・ダイレクターが、急遽、他の外資の社長として転職することになりました。次のダイレクターはまだ決まっていません。そこで社長からマーケティング・マネージャーの私に、臨時ダイレクターとしてのチームマネジメントと海外本社との折衝をやるように言われたのです。

あの時も、やはり「右も左もわからない」状態でした。なにしろ転職してきて3か月です。そのうえ、英語もまだロクにしゃべれない状態でした。無我夢中で働きました。自分の意思決定に20以上あったブランドの命運がかかっていました。いや、会社全体のマーケティングの責任を持っていたと言えます。それに心配する部下の目もあります。本当に必死でした。

しかしあの時ほど、マネージャー(管理職)として成長できた時期はないと、いまでも思います。おかげさまでグローバルな環境でのブランディングがどのようなものか、その実務はどのように進むか、グローバルとローカルの折衝業務はどのように行うか、部下のマネジメントはどのように行ったらよいか、全社のマーケティング・マネジメントはどのようにしたらよいか、様々なことを体験し学びました。(英語もたたき上げで習得しました)

三度目以降の「寝食を忘れる時期」は、またそのうちお話します。それにしても、このような時期に共通してあるのは、なにか「開眼したような感覚」ではないかと思います。「仕事に精通する」という言葉がありますが、そのような自覚が、ある日突然やってくるのです。(ちなみにAGFの時は地下鉄のなかでやってきました)

今やっていることの「全体の仕組み」が体系的に理解できて、かつ頭だけでなく、体もそれに応じて動くようになるのです。本を読んだレベルではない、実践的で味わい深い何かを体内に感じるレベルです。

要は、プロになる(成功する)ために必要な行動量を、ごく短期間に達成してしまうのが「寝食を忘れて働く」ことの目的なのかもしれません。ここで大切なのは行動の「量」です。広告クリエイティブの世界では「量は質につながる」という言葉があります。1つの優れたコピーを生み出そうと思ったら、まずは300でも500でも紙に書き出すことが大事で、それをやっているとダイヤモンドのような1つのコピーが生まれるのです。人生も同じだなぁと感じます。

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