配信日:2014年2月17日
近々、6冊目の書籍が出版されます。現在、そちらの執筆をしていて、なかなかメルマガが書けない状況です。新しい本のテーマは「売り込みを不要にする営業部の作り方」です。私はブランディング、マーケティングの専門家として企業のお手伝いをしてきました。その一環として営業はどの会社でも大きな課題でした。特に“ソリューション営業”は重要なテーマとして、いつも身近にあったと言えます。そのような話をまとめながら、頑張って書き上げたいと思っています。5月にはアマゾンや書店に並ぶかと思います。
さて、営業の話をする時、いつも私が思い出す寓話があります。「スープの石」という話をご存じでしょうか?
『ある村の女の人の家を身なりの良い旅人が訪ねて、何か食べ物を頂けないかと言いました。「あいにく何もないんですよ」と女の人は答えました。「ご心配はいりません」と旅人はにっこり笑って言いました。「このかばんの中にスープの石をもっていますから。それを熱湯の中に入れさせて頂ければ、世界一美味しいスープが出来上がります。大きな鍋にお湯を沸かしてください」
本当だろうか、と女の人は半信半疑で、火の上に大鍋をのせて、隣のおかみさんにこのいきさつについて耳打ちしました。お湯が煮え立つ頃には、近所の人が残らず、本当にスープができるかどうか、見にやってきました。
旅人は石をお湯に中に落としました。そして茶さじですくって、美味しそうに味わいました。「なかなかうまい。ジャガイモが入れば上出来だ」「ジャガイモなら、私のところにありますよ」と見ていたひとりが言いました。そして自分の家に取って返して、ジャガイモの皮を剥いたものをたくさん持ってきて、鍋に放り込みました。
旅人はまた一口、味見をして言いました。「ああ、うまい。肉が入れば素敵なシチューができるんだが」別のおかみさんが家に取って返って、肉を少しもって戻ってきました。旅人は感謝して、それを鍋に投げ込みました。一口味わって旅人は天を仰ぎ、「じつに美味しい!」と言いました。
「少し野菜が入れば、言うことなしだ。完璧だ」別の人が家に走って戻り、籠いっぱいのにんじんと玉ねぎを持ってきました。鍋に野菜を投げ込んで煮えるのを待ち、旅人は味見しました。そして今度は命令口調で言いました。「塩とソースが要りますね」「ここにあります」と家のあるじの女の人が言いました。
「めいめいにお椀を!」人々は家に取って返ってお椀をもって戻ってきました。パンと果物を持ってきた者もいました。そしてみんなで座って、おいしい食事が始まったのです。旅人はみんなに、信じられないくらい美味しいスープをなみなみとたたえたお椀を配りました。笑ったり、しゃべったりしながら、一同は最初の共同炊事のごちそうを味わいました。誰もがとても幸せな気持ちでした。
楽しいパーティの最中に、旅人はこっそりと立ち去りました。奇跡のスープの石を残して。世界一、おいしいスープをこしらえたいと思えば、いつでも使える不思議な、不思議な、魔法の石でした。』(世界中から集めた深い知恵の話100/マーガレット・シルフ編)
現在の営業マンの仕事は、まさしく旅人のようになっています。顧客の複雑で高度化した要求に応えるために、社内外のリソースを組み合わせながら“世界一、おいしいスープ”を作り出すことが求められています。
考えてみれば、この寓話で出てきた肉や野菜も、もともとはこの村にあったものでした。それが旅人のファシリテーションによって、協力的に集められ、最終的なスープを生み出したのです。営業活動も同じです。社内にあるノウハウやスキル、人材や知恵をうまく集合させ顧客にとって喜ばれるもの、同時に自分たちも大きな充足感を得られるような活動こそが、現在、求められています。これが私の営業観です。そのような美味しいスープを作り出せる営業組織、リソースの再編集によって新たな付加価値を提供できる旅人型の営業マンをもっと増やしたいと思っています。