スタッフの小さなつぶやく声を、電話が拾っていたのです。

配信日:2013年9月17日

こんな話を聞きました。
その方は両親を旅行に連れて行こうと計画を立てていました。これまでいろいろ苦労をかけてきて、なかなか親孝行も出来ずにいました。そろそろ親孝行をしたい。両親が新婚旅行で行ったサイパンに、家族全員で行ってはどうか?

最高に素晴らしい旅にしようと思いました。ちゃんとした旅行代理店で、ホテルにもこだわって、しかも出来るだけリーズナブルな値段で行こう。そして忙しい時間のなかで、大手の旅行代理店に電話しました。

若い女性のスタッフが応対してくれました。その方は当然、いろいろ聞きました。「このプランはどうか」「それだとオプションはどうなるか」「こちらだとどうか」・・・。「少々、お待ちください」スタッフが言いました。

その時、信じられない言葉が電話の向こうから聞こえました。「ったく、面倒くせーな、こいつ」・・・。「えっ・・・」と、絶句したといいます。きっ と感度のいい受話器だったのでしょう。スタッフの小さなつぶやく声を、電話が拾っていたのです。スタッフはそれを知らなかった。

その方はよっぽど言おうかと思ったといいますが、あまりのことに言葉が見つからなかったといいました。しかしやはりどうしても腹が立ってしかたな い。後日、その会社のお客様相談室に電話をしました。「新宿店の○○という方がこんなことを言った。本当はもう旅行そのものを別の会社にすることも考えた けど、もう時間がない。そこで私の案件を別のお店のスタッフに引き継いでもらえないか。私からは電話したくないので、新しいスタッフから電話をもらえない か」

私はその方に「で、どうなりました?」とたずねました。すると次のようにおっしゃっていました。

『本来なら、新宿店のスタッフの名前をクレームとして言ったのだから、その本人なり上司なりからお詫びの電話があってもいいのに、何も言ってこない のです。これが2つ目のびっくりでした。で、それがないまま、クレームを入れた次の日に、別の店の若い女の子が電話をしてきて、こう言いました。「昨日は すいませんでしたぁ。それでご旅行の件ですが・・・」私は3度、びっくりしました。あまりにも軽すぎる対応。すみませんでしたの一言で、もうそれ以上、ク レームに関しては触れたくないという態度。こっちは旅行で40万円も払うんですよ。一体、客をなんだと思っているのか?もう、二度とあの会社は使いませ ん』

この会社は昨日出てきたようなネット会社ではありません。社員の接客についても、クレーム対応についても、おそらくしっかりしている会社だと思います。なぜ、こうなってしまうのか?その人としばらく、そんな話をしました。

その原因は、仕事を「業務」と捉えるマインドセットだろうと思われます。業務なので、あたかも流れ作業のように受注、納品につながれば良いと考えて いる。予算達成を第一とする社風のなかで、お客さんはあたかも「財布」。お客さんに感動を与えるという発想や情熱に欠ける。よって、クレームも「処理」と いう言葉を平気で使えるし、その処理も自己都合(お客さん無視)の、文字通り処理になる。詫びるという感覚の欠如。短時間で処理できればよい。できれば 「なかったこと」にしてくれれば最高だ。すべてが自己都合の発想なのです。

残念ながら、この会社はこれからもこうするでしょう。仕事という概念にまつわるパラダイムの問題です。仕事の見方が変わらないと、よかれと思って ずっと同じことを繰り返す。なぜそうするのかと聞かれれば、「会社がそれを求めるから(不文律で)」とスタッフは応えるでしょう。しかし経営者にとってゆ ゆしき問題であり、結局は、スタッフひとりひとりの仕事観に帰る問題ですね。

では仕事をどのように捉えたら良いか?
これは人それぞれですが、仕事を「人生」と捉えてはどうでしょうか?「仕事と思うな。人生と思え」。これは私のオリジナルではありません。カリスマ体育教 師、原田隆史先生の言葉です。いい言葉だなぁとつくづく思います。毎日の仕事を人生そのものと考えたら、「業務」「処理」という言葉で過ごすなど、なくな るのではないか?

お客様に素晴らしいサービスをするなどと立派なことを考えるよりも、「自分自身の人生を生きる」つもりで今日の仕事に向き合えたら、真摯に取り組め る。否が応でも、お客様への接客もサービスレベルも格段に上がる。いや、上げたくなるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

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