空気のように透明な価値に気づいていますか?

配信日:2013年3月11日

先週からいろいろな会社さんに出向き、意見交換会をしています。このメルマガでの呼びかけで始まったもので、そもそものテーマは「将来、もっと元気な会社になるには」でした。申し込みは全部で15社。業界は様々です。当然、私自身も知らない業界や会社のことを、事前に猛勉強して臨みます。まだすべて終っていませんから、これからもしばらくは続きます。

このような意見交換会に申し込まれる会社さんというのは、単純に「悩んでいるから」申し込むわけではないと知りました。むしろ逆で、「今後、どうしたらもっと発展できるのか」という前向きで未来志向の会社がほとんどでした。

概ね、どこの会社さんも担当の方々は元気でした。そして健全な批判的精神の持ち主の方々でした。批判的精神、またはクリティカル・シンキングなどの言葉の由来をあらためて実感することも出来ました。クリティカル・シンキングは時々、ロジカル・シンキングと同じ意味で使われますが、私はロジカル・シンキングの前段階にくるものがクリティカル・シンキングだと思います。

一般的に「批判」などという言葉は、どちらかというとネガティブで「粗探し」的なニュアンスを持つかと思います。しかし他人の意見を批判的に眺めると言うよりは、「自分の思考フレームそのものを疑う」つまり「自らをクリティサイズする」という意味で使います。

自分が正しいと思っていることを前提に問題解決に当たると、そもそも自分が「正しい」と思い込んでいる事自体が足かせになって、解決策にたどりつけないことが往々にしてあるわけです。そのような「落とし穴」を認識して、時には自分の正しさを疑いながら思考のフレームそのものを注意深く検討することこそ、クリティカル・シンキング、または批判的精神と呼ばれるものと思います。

私たちのようなコンサルタントが必要とされる理由はここにあります。自分の正しさに潜む「まずさ」に気づくには第三者の目が効果的なのです。

さて、そのような批判的精神の持ち主のみなさんでしたので、意見交換会は本当に有意義に活用して頂けたようです。人間とは面白いもので、外から見たら明々白々の事柄なのに、内側にいると空気のように透明になってしまう問題があります。

例えば「自分たちの強み」「我が社の美徳」「ブランドが持っている可能性」など。このようなものは私の目(外部)から見たら、「もうこれしかないでしょ」と断言できるようなことでも、ご本人達にはあまりにも当たり前で、その価値を認められない(価値とすら思わない)ことがありました。

そのような時は、たいてい言葉遣いにも現れます。例えばある会社さんでは「国産」という言葉をあまり良い意味では使っていらっしゃいませんでした。ドメスティック(ドメ)はグローバルやワールドワイドに比べて、劣るようなニュアンスがありました。

しかしいまや「国産=日本製」はグローバル市場では競争力とブランド力を示すものでもあります。海外でのそのような評価は国内市場へも逆流しています。日本企業の国際競争力が弱くなったと言っても、負けているわけではありません。「国産」は「JAPAN品質」という言葉に置き換わり、それまでの言葉遣いも変わりました。

またあるIT系の会社さんでは、自分たちの技術以上に、プロジェクトへの取り組み姿勢が非常に大きく評価されているということに気付いて頂けました。それまで技術の先進性や優位性をアピールしてきたけれど、そこでのブランディングはあまり効果的ではなく、むしろ技術を売り物にしながらも、サービスのきめ細やかさやお客さんへの深いコミットメントが本当の独自性になっていると思われました。こちらも喜んでもらえました。

まさしく社内にある空気のように透明な価値です。空気は目に見えないけど、確かに私たちの生命には価値のあるものですね。会社のそのような価値も、目には見えていなかったもの(気づきにくいもの)ですが、確かに今の会社を支える価値そのものです。

その他にも色々なケースがありましたが、いずれにしても、それまで気づかなかった強みや独自性などに気付いてもらうのは本当に嬉しいものです。そしてこのような場合、「目からうろこでした」という言葉を頂きます。これは私にとっては、最高の褒め言葉の一つです。この言葉を貰えることがコンサル冥利に尽きると言えます。

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