何度でも挑戦するとは?
配信日:2012年8月8日
先週、14歳の息子の野球部合宿のことでメールが来ました。
「お金のことで恐縮ですが、野球の合宿のお金を6日までに振り込まなければなりません。そのことが書いてある紙を昨日渡されました。3万5000円なのですが、お願いできますか?」
メールの主は私の元嫁さんです。4日にもらったので6日と言えば2日後。あまり時間がありません。なぜ、こんな間際になって野球部の合宿費用の話が出るのか?もっと前から分かっていたはずなのに・・・。
そこで次のようにメールを書きました。
「お金のことは突然だと大変です。その野球合宿は本当に必要ですか?もしそうなら本人(息子)から直接話を聞きたい。なんでも直前になって母親に頼むのは良くない。直接、私に連絡するように」
14歳の長男にしてみたら3万5000円は大金だし、直接、オヤジに話しづらいことだとは思います。しかし話しづらいことをすべて母親に押し付けて、本人がそれで自分の仕事が終ったなどと思っているとしたら大間違いなのです。そのようなメンタリティのまま大人になったら大変です。
私は離婚しているし子供とも別々に暮らしていますが、家庭での教育とはこういうところをちゃんと押さえていくことではないかと思います。もしこれで「はい、そうか」とお金をすんなり払ったら、息子は、世の中とはそういうものだと思うかもしれません。「大事なことは先延ばしにしても良い。イザとなったらおふくろがなんとかしてくれる」
そして息子から電話がかかってきました。「野球部の合宿のお金を払って下さい」私は言いました。「そんな大事なことは前から分かっていたのに、なんでいままで黙っていた?」
息子は答えません。「お前、お母さんに言えばそれでお金が出てくると思っていたのか?」「そうじゃないけど、いい忘れた」「ほう、言い忘れるようなことならお前にとって大事なことじゃないのだから、行く必要はない」「いや、みんな行くからオレも行きたい」「じゃあ、オレがお前のためにお金を払わなければならない理由を説明してくれ」
息子は再び黙ってしまいました。私は電話を切りました。
2回目の電話がすぐにかかってきました。「親なんだから払うのが当然だろ!」言い出しはこうです。「親であろうと必要のないものにお金は払わない。そんなに行きたければ自分で払え」「貯金なんて2万しかないよ・・・お願いします。払って下さい」「オレは、お前とはもう一人の大人として付き合いをしている。だからダメだ」
そこでまた電話を切りました。その日はそれで終わりです。実は私には考えがありました。息子がこうしたら何も聞かず気持よく払うという考えです。
次の日の夜に息子から電話がかかってきました。もう明日にはお金を払わなければなりませんから、焦っていました。「お父さんが離婚なんかするからお母さんはお金がないんだ。お父さんに頼むしかないじゃないか」
泣き落とし。痛いところを突いてくるけど、それで負けるわけにはいきません。「毎月、お母さんにはちゃんとお金を渡している。その中でやってくれ。で、オレがお前にお金を払う理由は?オレがお前にお金を払ってやりたい、是非、合宿に行かせてやりたいと思う理由は?」息子は答えられません。そこで私は電話を切りました。
しばらくして電話がかかってきました。「どうしていつも一方的に電話を切るんだ!」「お前が話さないからだ。で、理由は?」「なんでそんなに頑固なんだ!」「うるさい。オレが納得できる理由を言わなければ合宿に行く必要はない」「・・・・」4回目の電話もこうして一方的に切りました。
しばらく電話がかかってきませんでした。多分、対策を考えていたのか、それとも諦めたか?・・・12時前に電話が鳴りました。「どうしても合宿に行きたいのでお金を払って下さい」「わかった。明日払う。行ってこい」
即答されて・・・息子はキョトンとして、しばらくして「ありがとう」といいました。「お前の説明は1回目の電話と同じだったけど、何故、払うと言ったか分かるか?」息子はわからないと言いました。
一応言っておきますと、私は最初から払うつもりでした。しかしどんな説明をしようと4回目までは頑として拒否するつもりでした。そして、もしそれでも諦めずに電話をしてきたら、もし拒絶されてNOを言われ続けても、それでも5回目の電話をかけてきたら・・・私は気持よく払うつもりでいました。今回の電話が5回目だったのです。私が払わなければならない理由など、どうでもいいのです。単純に頑固オヤジに電話をするという「挑戦の回数」だけが問題でした。
14歳はこれから大人になる入り口です。これから実社会にでるとNOを言われることが多々あります。それでも挑戦し続ける人が成功していきます。失敗しても拒否されても、それでも挑戦し続けること。その先には必ずYESがあることを息子に教えたかったのです。息子にはそう説明しました。すると納得したような冷静な声が返ってきました。
息子も大学に入るくらいまでは親のスネをかじるでしょう。しかし、できるだけ上手なかじらせ方をしたいと考えています。私の父親もそうだったからわかります。