我々はマニフェストを書いた。でも決して事業計画書は書かなかった
配信日:2012年5月16日
友人でクリエイティブ・ディレクターの江上隆夫さんがゴールデンウィーク前に「プレゼント」というメールをくれました。そこにはアメリカのエコロジカルな雑貨店「ホルスティー」のウェブ・サイトが貼り付けてあり、次のように書いてあります。
『我々はマニフェストを書いた。でも決して事業計画は書かなかった』
そのマニフェストとは次のものです。
『これはあなたの人生です。
自分が好きなことをやりなさい。
そして、たくさんやりなさい。
何か気に入らなければ、それを変えなさい。
今の仕事が気に入らなければ、やめなさい。
時間が足りないのなら、テレビを見るのをやめなさい。
人生をかけて愛する人を探しているなら、それもやめなさい。
その人はあなたが自分の好きなことを始めた時に、あらわれるのです。
分析しすぎるのをやめなさい。人生はシンプルです。
すべての感情は美しい。食事をする時は、一口ひとくちを味わいなさい。
新しいことや新しい人々に、意識を、腕を、そしてこころを開きなさい。
私たちはそれぞれの違いで結びついているのです。
次に出会う人に、何に情熱を傾けているのか聞きなさい。
そして彼らと自分の夢をシェアしなさい。
旅行をたくさんしなさい。
道に迷うことで、自分自身を発見するでしょう。
ときにチャンスは一度だけしか訪れません。それをつかみなさい。
人生とは、あなたが出会う人々であり、その人達とあなたが作り出すものです。
だから、外に出て作ることを始めなさい。
人生は短い。
自分の夢を生き、そして自分の情熱をシェアしなさい』
なんとも素敵なマニフェストだと思いませんか?
江上さん、ありがとう。
このようなマニフェストは、なにか悟りを開いた人が語るようにも思うものですし、静寂の中の会社を思わせるのですが、これがそうではないのです。非常に情熱的でなによりかっこいい。参考までにウェブ・サイトを貼り付けますね。
http://shop.holstee.com/
いかがですか?
共感された方も多いのではないかと思います。この共感の根源は「ホルスティー流の賢いライフスタイル」にあるように思います。
このホルスティーに限らず、最近は「業界トップになる」とか「カテゴリートップになる」など競争志向のブランディングは飽きられつつあると思われます。特に既にトップ・ブランドになっているブランド担当者はそこにあまり情熱を感じない。その代わりに「消費者との関係性をより広いライフスタイルのなかで位置づける」にはどうしたらよいかを考えることが多くなっています。
そうなっている背景には「新規顧客の間口を広げたい」という思惑があると思われます。そのためにはブランド自体の、従来のありきたりの位置づけのなかでのありきたりのコミュニケーション訴求ではなく、ライフスタイルのような広いフレームのなかでのブランド訴求が求められているようです。
例えば、スポーツブランドであればジョギング・シューズのカテゴリーでどうかよりも、「走る」ということや「健康」という切り口でのブランドの主張や思想の伝達。化粧品であれば「スキンケア」ということよりも、「美」や「女性」という切り口での主張や思想を伝えること。
このホルスティーもそうですね。
シューグル(シリコンラバー素材)製品の訴求ではなく、生活の中での「アイディア価値」の訴求や、Tシャツの売り込みではなく、使い方に関するアイディア価値の訴求。そこに年代を超えて顧客を魅了するヒントがあるように思います。
コンサルティングでも最近はリブランディングの要請が強まっていますが、まさしく今は転換点なのだろうと思います。既存のブランディング手法や考え方では消費者と強い繋がりを持てなくなってきているのですね。
カテゴリートップであるということすら、消費者にとってはどうでもよい価値になりつつある。むしろこの社会のなかでイノベーティブであること、または見慣れたものを違う見方で眺めるヒントをくれること(リフレーミング)がファンになって頂ける理由かもしれません。その切り口がライフスタイルなのでしょう。ライフスタイルは古くて新しいキーワードだと思っています。