行商人とロバ

配信日:2012年1月25日

今回は、イソップ物語を紹介します。
マーケティングの仕事をしている人には一種のアフォリズム(警句)として、馴染みのあるものかもしれません。

行商人の父親と小さな息子が二人で荷を担いでロバをひいていました。
ある村につくと、村人が言いました。
「あの親子を見てごらん。バカだね」
「本当だ。せっかくロバをひいているのに、なぜ荷をロバにのせないのかね?」

それを聞いた親子は思いました。「ほう、確かに。よし荷物をみんなロバに乗せよう」

そして次の村に着くと、そこの村人は言いました。
「あの親子、知恵がないね。ロバに荷物を乗せているよ」
「本当だ。あれではロバがもたないね。乗せるなら小さな子供を乗せるべきだね」

それを聞いた親子は思いました。「なるほど良いことを聞いた。では息子よ、お前が乗れ」

そして次の村に着くと、その村人が言いました。
「みてごらん、親不孝な息子がいたもんだ。親を歩かせて自分はロバに乗っている」
「本当だ。普通は親を乗せて自分は歩くんじゃないか?」

それを聞いた息子は言いました。「父ちゃん、ロバに乗って。僕が歩くから」

また次の村に着くと、そこの村人が言いました。
「ひどい親がいたもんだね。あんな小さな子供を歩かせて、自分はロバに乗っている」
「本当だ。かわいそうに」

父親は深く反省して言いました。「息子よ、気の毒なことをした。しかしどうしたものか?」
すると息子が言いました。「父ちゃんと僕の2人がロバに乗ればいいんだよ」
「いいアイディアだ。ワシ達2人が荷物を背負って、ロバに乗れば良い」

次の村に着いた時にはロバは疲れきってよろよろです。村人が言いました。
「なんてひどい親子だ。あれではロバがかわいそうだ」

親子はさんざん言われてしまいました。「一体、どうしたら良いのか?もうやることがなくなってしまったぞ」

その時、息子が言いました。「父ちゃん、まだ一つだけ残っているよ。僕たちが荷物を担いで、さらにロバも担げばいいんだよ」

それから親子は二人がかりでロバを担ぎあげました。

最後の村に到着したら、さあ大変です。
「なんだ、あの親子は?ロバを担いでいるぞ!」
「一体、何を考えているんだ?」
「あぶない親子だ。近寄るのはやめよう」

そう言って誰にも相手にされず、商売もできなくなってしまいました。おまけにロバも慣れないことをさせられたせいで、具合が悪くなってしまいました。親子はお客さんだけでなく、ロバまで失ってしまったのです。

この物語はすべての顧客ニーズに応えようとすると、結局は誰のニーズも満たせないことを物語っています。同時に自分たちの方針(戦略)を顧客の声に委ねすぎることの危うさも示唆していますね。私がAGFでマーケティングの仕事を始めた頃に、上司から聞いた話です。

年別バックナンバー

資料請求・ご相談はこちら ▶

bmwin

『ブランド戦略をゼロベースで見直す!』
ご相談、お問い合わせはこちらから▶