3人の自分。そしてブランドの資産と負債

配信日:2011年

最近は「坂の上の雲」にしても「龍馬伝」にしても日本の変革を待望する歴史ドラマが多いですね。もし明治の開国期を生きた人達が現在のように閉塞感のある日本を見たらどう言うでしょうか?「上手くいかないのは仕方ないなどと、生ぬるい思考停止に甘んじるんじゃない」と叱られるかもしれません。

世の中を変えるのは難しいかもしれませんが、世の中が閉塞感に満ちているからと言って自分まで不幸であるとは限りません。自分を変えてみれば良いのであって、こちらのほうが世の中を変えるよりもずっと簡単です。

そもそも自分を変えるには、まずは自分を知ることが大事なのですが、これが難しい。厳密には「自分ひとりで見つめ理解するのは難しい」のです。どうやら「自分」には「3人の自分」がいるようなのです。

最初の「自分」は「私が考える私」です。これは言葉を変えるならば「セルフ・イメージ」と言っても良いものです。二つ目の「自分」は「他人の考える私」です。別の言い方をするのならば世の中が抱く「ブランド・イメージ」になります。最後の「自分」は「本当の私」です。ブランディング的な言い方をするならば「ブランド・エッセンス」となります。

この3人の自分が渾然一体となっているから混乱するし話がややこしくなります。多くの人はセルフ・イメージとブランド・イメージのギャップに悩んだり恩恵を受けたりします。それを上手く活用しようとして世間からのブランド・イメージに自分を合わせようとすると自分のなかでフラストレーションやフリクション(軋轢)が起きます。逆にセルフ・イメージに忠実に生きようとすると、時に機会損失を招くことがあります。

そのように試行錯誤を繰り返せば繰り返すほど「本当の自分とは何なのだろう」という当然の疑問が沸き起こり、必然的にブランド・エッセンスを知りたいという欲求が生まれるわけです。実際にセルフ・イメージやブランド・イメージを整理し活用するにはブランド・エッセンスを知ることが最初になければならず、これは企業ブランドも同じことです。ブランド・エッセンスがベースにあってブランド・イメージの構築を図るというブランディングの基本設計はこのようにして成立するわけです。

では自分のブランド・エッセンスを知るにはどうしたら良いのでしょうか?それは他人と一緒に客観的に自分の「資産と負債」を見つめてみることです。

ブランドの資産とは「自分であるだけで、精神的や経済的なメリットが享受できる要素」です。明石家さんまさんが「生きてるだけで丸儲け」とよく言いますが、まさしくこれがブランド資産を上手く言い当てた表現です。

一方、ブランドの負債とは逆に「自分であるだけで精神的や経済的に損失を被る要素」です。つまり自分が気付かない悪い癖。知らず知らずのうちに他人が離れていく自分のあり方です。

ブランド人材として自分自身を定義するのならば資産を知ると同時に負債も自覚する必要があります。そう、きっと「自覚」の問題なのです。悪気はないのにどうしてこうなっちゃうの?という傾向や原因を予め知っておくことが大事に違いありません。そして負債を減らすだけでも相対的に資産がクローズアップされてきて物事は上手く運ぶようになるようです。

負債を知るヒントはどうやら次のような点です。
1. 人間力が不足している部分。例えば優しさの欠如や思いやりのなさ。
2. 資産だと思っているものが実は「やり過ぎ」によって負債に変化しているもの。例えば弁が立つことが長じすぎて口が悪いとなってしまうこと。
3. 思考や行動において一定の失敗パターンがあるのにそれ自体を認識できていないこと。強い思い込みや稚拙な考え方。例えば自分の仕事を「これこれこういうものである」と捉えるクセ。

このようなことを知るには、例えばパートナーや仕事の上司など身近にいる人に観察してもらうのが良いのです。そしてどんどん忠告してもらう。セルフ・ブランディングを自分ひとりで行なうのは難しいと私は考えていますが、それは身近な人と一緒に行なうことが大事だという意味です。

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