サービスのフォーメーションを考える
配信日:2011年
サービス業の個人事業主の方の相談で多いのは「サービス内容が専門的でなかなかトライアルを取れない」というものです。専門的という言葉に象徴されるように、たいていは事業コンセプトの専門特化もちゃんと出来ていて、そこにフォーカスしているのだけれども「なかなか売上がついてこない」という相談です。
サービス業個人事業主というのは自分自身の能力を商品とみなしてビジネスをされている、いわゆるフリーランスの方が一般的ですが、そもそも「売れる」ということを要素別に分解してみると次のようになります。
1. 何かの仕事に専門特化していること。スペシャリストとみなされること。
2. 仕事以前に人間としての魅力があること。顧客が応援したくなる人柄であること。
3. 業界内ではちょっとした有名人であること。ターゲット顧客に認知されていること。
これらの要素がそれぞれある一定レベルで満たされてくると「売れる状況」が整ってきたといえます。言葉を変えるならば「ブランド人材とみなされてきた」といえます。
しかしこれらを満たしていても「売れない」という場合は「サービスのフォーメーション」を考えてみることをお勧めします。
サービスのフォーメーションとは何かというと「自分の提供するサービスを細分化してフロント・プロダクト、エンド・プロダクト、シンボル・プロダクトに分類してみる」ことです。(カタカナが多くてスミマセン・・・。)
「フロント・プロダクト」とは顧客が気軽に手に取ることができるサービスです。購買の「入り口」になるサービスなのでフロント・プロダクトと呼ばれます。低単価で購買のリスクが極めて低いもの。最近では「フリーミアム」というコンセプトでも紹介されているように、無料であることも多いサービスです。以前、お手伝いをした人材紹介サービス会社さんを例にするなら「無料年収査定」などがこれに当たります。
「エンド・プロダクト」とはフロント・プロダクトを買ってくれた顧客(既に囲い込みが始まっています)にアプローチする高付加価値型のサービスです。本当は最初からこれを売りたいのですが、高価格で専門的な内容のサービスなのでお客さんはなかなか手が出ないのです。よってフロント・プロダクトを買ってもらった時点からコミュニケーションを始め、顧客がエンド・プロダクトにニーズを感じたときに買ってもらうことを狙うサービスです。よって購買頻度は低いかもしれないけど1回当たりの購買金額が大きいもので、人材紹介サービスで言うならば「転職斡旋業務」になります。
フロントとエンドの関係は常に補完的でなければならず、フロントの購買者はエンドのターゲット顧客である必要があります。逆にフロントとエンドがバラバラだと、顧客の囲い込みとエンド・プロダクトの売り込みが上手くリンクせずに無駄が出る結果になります。
最後に「シンボル・プロダクト」というのがあります。これはコンセプトを象徴的に示すサービスでして、顧客がその魅力や新規性に「おっ」と驚くような、キャッチーな位置づけのサービスです。人材紹介サービスでいうなら「トヨタ、パナソニック、キリンビールなど年収800万円以上の案件が半分以上を占めています」という紹介のされ方をする、いわゆる「見せ筋」です。これによってフロントもエンドも含めて、その会社で扱っているすべてのサービス・バリューが底上げされます。
今回はサービスを例にフォーメーションの考え方を紹介しましたが、この3つのタイプは、どんな業種にも当てはまるものです。一度、ご自身のサービスや商品をそのような視点で再分類して活用してみるのは売上を改善するヒントになると思います。