お客様にはわかる
配信日:2011年
来年で私たちの会社は10周年を迎えます。
早いものです。大学を卒業してサラリーマンとして11年働いた後に独立したのですが、それと同じくらいの時間が経ったということです。
10周年を迎えるにあたって、現在、色々なプロジェクトを進めています。
ブランド・ロゴのリファイン、HPの作り直し、10年前に出版した「ブランド・マネージャー(経済界)」の電子書籍化と無料化、新しい書籍の出版・・・。いろいろありますが、最も大きいプロジェクトは「自分たちのコンサルティング・サービスの見直し」です。
見直しのきっかけをくれたのは、ある業者さんでした。
私どもの会社は、例えば経理に関して会計士の先生にお願いするように、いくつかの分野について外部の専門家の方々に面倒を見て頂いています。その業者さんもそうしたチームの一社でした。
その会社さんはとてもよくやってくれたのですが、次第に「何かがおかしく」なっていきました。仕事が雑になったというか、荒くなったのです。最初は大して気になりませんでした。しかし満足できない仕事が増えるようになりました。
一方で、新しいサービスの提案は頻繁になりました。
「こんなサービスをはじめましたので如何ですか?」それ自体は別段よいのですが、私たちに「売る」話ばかりが増え、現在のサービスがおろそかになっているのが明らかでした。
この会社には申し訳ないですが、これは自己本位な会社によくある傾向です。新規顧客の集客ばかり考えて既存顧客のケアがおろそかになる「病気」です。この会社さんもそうでした。「売ることばかり考えてないでもっとサービス品質の向上を考えろ」
そんなことを不満げに考えながら、あっ!と思いました。「自分たちのコンサルティングはちゃんと出来ているだろうか?」
私たちのクライアントさんは「コンサルティング」「知恵」という目に見えない商品に多額のお金を払って下さいます。
私たちは本当にその金額に見合う仕事をしてきただろうか?この会社さんのように、いつしか自分本位の付き合い方、仕事の仕方になっていなかっただろうか?そもそも私たちの「コンサル品質」とは何か?
そのような疑問を自分自身に投げかけた時、私は10周年の行事として「サービスの見直し」をやるべきだと思いました。いや、10周年だからというよりも、毎日、常に今すぐやるべきだと思いました。お客様には本当に自分たちのことを考えて仕事をしているかそうでないか、直感的にわかるものです。私たちが習慣的に取り組んでいるスキームや方法が、果たして本当にクライアント企業にとって良いことなのか。
そのような気づきをくれたこの業者さんには感謝しています。
似たような話を(財)ブランド・マネージャー認定協会でマスタートレーナー兼理事を勤める小野ゆうこ先生から聞きました。
『スティーブ・ジョブズ氏の商売哲学がよく現れている、あるエピソードを紹介します。Apple社がストア展開をするとき、本社内の倉庫に、ストアの原型を作っていました。
ドアノブひとつでも何億という投資をして何千回と作り直させるジョブズ氏。その姿勢を現場で体感した日本の副社長は、「なんでこんなにこだわるんだ」とときに腹立たしく、理解できなかった。ところが、彼が何度も何度も口にする言葉を繰り返し聞いて現場を観るうちに、あっ!と理解できたといいます。
その言葉は「お客にはわかるんだよ」です。
人間の感性を見くびってはいけない。その感性に向き合う仕事をわたしたちはしているんだ。
これを知った時、すべては人間の感性への尊重から彼の仕事は始まっているんだと気づいたと言います。身が引き締まるエピソードです。』(つくるひと「パンダ新聞」/10月18日号を小野先生了解のもとに掲載)
お客様にはわかる。
既存のお客様を大事にしない会社に、新規のお客様が長く継続的に留まるはずがないのです。最近は、この言葉を胸に刻んで毎日のコンサルティング内容を見つめています。