復刻版商品の市場導入戦略

配信日:2011年

復刻版商品の市場導入戦略

今回は復刻版商品について考えてみましょう。
今年の復刻版で、私の記憶に一番残っているのはコカコーラから6月に発売されたメローイエローです。1983年に発売され「とっても訳せない味」の広告コピーで人気でしたが2000年に終売。2004年にセブンイレブン限定で再登場しましたが、再び終売。今回は7年ぶりの復刻版として再登場でした。今年は節電の影響で炭酸飲料の需要が伸びたようですから、きっと売れ行きも好調だったと思います。

一方で、商品入れ替えの激しい飲料業界にあって、ちゃんと棚に並んでいるのはメローイエローの復活を期待する消費者が少なからずいたことを証明しているようです。

マーケターの側からすると、復刻版商品がある程度売れることは想定内です。一般の新製品と違いブランド認知、理解、好意の醸成を最初からする必要がなく、またターゲット消費者は「かつてのユーザー」であり、顧客プロフィールなども描きやすいからです。

よって復刻版商品はかつてのブランド・イメージを壊さないようにすることが重要になりますね。これはよく言われることです。

一方で復刻版であろうと、それを手にする新しい消費者はいるわけでして、彼らのブランド・イメージがどうなるかは興味深いところです。そこにブランドの将来像を垣間見るようです。私にとってメローイエローは「懐かしさ・レトロ感」でも、若い世代にとったら「クール」かもしれません。ブランドとして再度梃入れするヒントがここにあります。これはロングセラー・ブランドでも同じことですね。

復刻して欲しいブランドは何かと聞かれたら、みなさんはどのように答えますか?
弊社のアシスタントに聞いたら「ロッテVIPチョコレート」と答えました。私は「プジョー205」です。

復刻版マーケティングを非常に上手くやった会社はナイキではないかと思います。
現在、40歳以上の人(私の世代)が高校生の頃に履いていた「ナイロンコルテッツ」「ワッフルトレーナー」などは、ご存知のように現在では街履きのスニーカーとして復刻されていますね。

陸上部だった私は、かつて部活などで使っていたのです。しかしやがて大人になり、あまりスポーツもしなくなりました。お腹が気になりだした中年にとって、ナイキの復刻版スニーカーはちょっとした懐古趣味を覚えさせます。

一方で2年前にサッポロビールから出た「サッポロ・ラガー」の復刻版も素晴らしいなと思いました。世の中は生ビールが王道ですが、ラガービールの美味しさも捨てがたいものがあります。ましてやサッポロ・ラガーは日本で一番古いビールでもあります。サッポロ・ブランドが持つ北海道開拓使時代の雰囲気と味わい。ナイキに惹かれる一方でビールにも惹かれる。お腹が気になるわけです。

映画やドラマでのアニメのリメイクも復刻版マーケティングの面白い題材ではないでしょうか?「ヤッターマン」「マッハゴーゴーゴー」「あしたのジョー」、最近では「妖怪人間ベム」も復刻版と捉えて良いでしょう。これらも主な視聴者はかつてのアニメ・マンガを見ていた世代。それを現代風にアレンジすることに視聴者の「見る理由」があります。

時にはブランド・イメージの改善を図るために復刻版が市場導入されることもあります。メルセデスの「マイバッハ」はその最たるものでしょう。

高級車としてブランディングを行なってきたメルセデスにとって「Aクラス」の市場導入は大きな転換点だったと思います。それまで最安値だったCクラスよりも40%も安く、かつ高級車とは正反対の大衆向けコンパクト・カー。「メルセデスがコンパクト・カー?」と思った方も多かったのではないかと思います。私もメルセデスのフォーカスがぶれたように思いました。

顧客の持つブランド・イメージが安っぽいものに変化したのではないか?特に既存オーナーのブランドを見る目が変わり始めたのではないか?

そのような懸念があったので、その後、メルセデスはかつての最高級車である「マイバッハ」を再登場させたのだと思います。それによってブランド・イメージを再度持ち直そうとしたのではないか?

そんなマイバッハも最近では終売のニュースが出ているようです。復刻版商品としての役目は終えたのかもしれません。

このように考えると、復刻版商品というのは単純に製品戦略と捉えるよりも「コミュニケーション戦略の一環としての製品」と捉えることも出来そうですね。ただ単に売上を上げることを目的とせず、顧客との関係性を見直したい時に使える手法とも思われます。

すのではなでしょうか?

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