キャリアの棚卸
配信日:2010年
バンコクの日本企業で働いている妹から100人ほど採用面接をしなければならないと相談されました。採用枠は一人です。一人1時間だとしても単純に100時間かかります。しかも100人全員を正しく評価できるかどうかも疑問です。私なら8人目以降はちゃんと覚えているかどうか怪しいものです(笑)。
私のアドバイスは「無作為に5人ずつグループにしてテーマを与え、10分程度のフリーディスカッションをしてはどうか」というものでした。そのディスカッションを通じて優秀と思われる人材の当たりをつけて、そのあとにちゃんとした面接をしてはどうかと。
考えてみれば、私もこれまで多くの面接をしてきました。それは「やる側」「受ける側」両方です。「やる側」の時はヘッドハンターを通じて人材に会うことがほとんどでしたので、比較的絞り込んだ状態での面接が多かったものです。
逆に「受ける側」の時は「自分を商品と見立てて」面接に臨むことがほとんどでした。これはマーケティング・バックグラウンドの人間としての自負ですらあったように思います。今思うと、ちょっと気負いすぎていたかなとも思いますが(笑)。
これから転職を考えている方に一つアドバイスをするなら「市販の履歴書フォーマットは使わないほうが良い」ということです。私は市販フォーマットにペンで書かれた文字を見た時点で、その人物が「大多数の一人」にしか見えませんでした。会う前からそのような刷り込みがありました。結果、内容もロクに読まなかったですし、面接は落とすためのポイントを探すのが中心になっていたように思います。これは転職希望者にとっては損なのです。
ではどうするかというと、レジュメ(履歴書)は自分なりのフォーマットをマイクロソフト・ワードで書き上げるのが良いのです。もっというならばレジュメとは個人にとっての「製品パンフレット」であり「広告」に他なりません。「この人に会ってみたい」と思わせる仕立てと内容でなければなりません。
仕立てについて言うならば、仮に日本企業への就職であろうと欧米流のレジュメの書式は受けが良いようです。いわゆるパーソナル・プロファイル(個人情報)とキャリア・レコード(職務経歴)を主要項目として、キャリア・レコードは直近のものから書いていくスタイルです。
内容については、実は「毎年のキャリアの棚卸し」をするのが近道です。ちょうど今(1月)くらいの時期に「去年はどんな仕事をやってどんな成果がでたか」を振り返ることです。そして成果の部分は数字で示すようにすることが重要です。
同時にその時の仕事内容を面接担当者に分かりやすく伝えられるよう、例えばキャンペーン・リーフレットや製品パンフレット、あるいは顧客からの感謝状などをファイリングしておき面接当日にインタビュー・キットとして持ち込むと良いでしょう。面接官はプレゼンテーション能力に感心してくれます。
私もこの手法を度々使ってきました。もっともマーケティング・ダイレクターの面接などポジションが上級マネジメントのものになってからは逆に使わなくなりました。パンフレットなどカラフルな素材を使ってキャリアを売り込むことが、どこか「私を雇ってください」とお願いしているように映ると考えたからです。
魅力的な内容のレジュメにするには毎年、内容をアップデートすることです。実際に年収もポジションも毎年変わる可能性が高いので「このような仕事の結果、このようなポジションと年収になった」という因果関係をあぶりだしてみることです。
またアップデートとはいうものの、「上書き保存」をしないことも重要です。去年のものを「名前をつけて保存」した後に、それに上書きをしていくこと。そうすると3年、5年と時間が経過した時にその変遷を見ることで、自分のキャリアの一貫性や強み(経験としての得意分野、成果を出しやすい自分流のスタイル)を発見することが出来るからです。これが自分のフレームを見つける良い材料になります。
これは私がブラ研会員さんのセルフ・ブランディングのセッションを行うときにも用いる方法で、実際に成果の出るやり方です。