インターナルブランディングとは?
配信日:2010年
インターナル・ブランディングとは「仮に給料がいまと同じであろうと、その企業のために一生懸命協力したい」と社員が自発的に思っている状況を作ることです。ですから、実態は「マネジメント」と同義語、「マネジメントのいまふうの言い方」だといえます。
具体的には「組織文化を作っていくこと」でもあります。ご存知のように、組織文化とは経営者の性格を色濃く反映するものです。なぜならば部下は経営者との対話を通じて、経営者がなにをした時に喜び、何をした時に逆鱗に触れるかを無意識のうちに学ぶものだからです。
そこから発見した「法則」が暗黙知としての組織文化になります。もっと言うと、部下とは上司の真似をしてその組織の一員となるものです。だから上司がまともじゃないと部下も当然、まともじゃなくなり、結果、その組織はまともじゃない組織になるのです。
あるマーケティング・ダイレクターは勉強のできるタイプばかりをブランド・マネージャーとしておくことを好みました。チームは「お勉強タイプ」ばかりです。しかしこのマーケティング・ダイレクターが失脚して、その後任として地方都市で営業部長をしていた百戦錬磨の人物が選ばれた。わずか3ヶ月のうちに、この「お勉強タイプ」は「熱血営業タイプ」に変身しました。ちなみにブランド・マネージャーの人選には手をつけていません。
「お勉強タイプ」が「熱血営業タイプ」に変わったときは、確かに離反していくブランド・マネージャーもいましたが、組織としてのルール(文化)を変えるには、実は「上司自身が変る」ことが一番効果的なのだというのをマジマジと見せ付けられた思いでした
多くの日本企業が営業志向にはなれても、ブランディング志向、マーケティング志向になれないのは、経営者が営業志向だからです。そうした日本企業と取引する外資系のトップマネジメントたちは、「日本企業にブランドというコンセプト、マーケティングという発想はない。日本企業で言うところのマーケティングとは『営業マーケティング』だ」と理解しています。ある外国人のマーケティング・ダイレクターがいみじくも言っていました。「もし、魚の尻尾が臭うとしたら、それは頭が腐っているからだ」
組織の性格を決定する独特の力学を上手く言い当てていると思います。もし、経営者が組織をブランディング志向なものにしたいのであれば、まずは経営者自身がブランディング志向にならなければならないのです。
もし経営者が、本当は価格を下げることに熱心であるにもかかわらず、部下にブランディング志向を求めるのであれば、それは遅かれ早かれ、部下の中に「不満」というきしみが出来ます。部下は消化不良をおこしているのです。部下は、経営者が広告よりもリベートを出すことに熱心なことを不満に思うのではないのです。「ブランディング志向になれ」という経営者の言葉と、「価格志向で行きたい」という態度のギャップに悩むのです。経営者はそのへんをハッキリさせる必要があります。それをハッキリさせなければ、経営者はたぶん、「本音と建前をよしとするカルチャー」で悩む事になるでしょう。
経営者の生き方や考え方が組織文化を作り出すというのは、つまりこういうことなのです。ブランディングに生き様が問われるというのは、実は社内でも同じことなのです。経営者は、そういう意味では「社内に対して自らをブランディングしているようなもの」なのです。だから経営者は、部下が真似をしたくなるような生き様をしなければならない。そういう自分を演じる必要があるわけです。部下が経営者のことを真似してくれればくれるほど、経営者は自分の望む組織文化を組織に浸透させることが出来るのです。