交渉とは何か

配信日:2015年3月26日

英会話の教室で「交渉」の話がテキストに出てきました。「あなたはバイヤーで、高級カバンを買おうとしています。メーカーに対して値下げの交渉をしてみてください」というもの。カバンの品質や色、値段、そして値下げのレベルや条件などはテキストに細かく書かれています。それに基づき、2人一組のバイヤー役とメーカー役になって、英語でロールプレイングをするものです。私はメーカー役になりました。

早速、相手のバイヤー役は交渉をはじめました。「このカバンを何個買うからこの値段にしてくれ」「まだ高い。この値段にならないか」「他の会社ではこのくらいの価格は普通だ」・・・。英会話力を磨くロールプレイとは言うものの、私はだんだん気分が悪くなってきました。そして言いました。「あなたのような値段のことしか言わない人はお客ではないので、さあ帰った、帰った」相方は唖然としてしまいました。正直、悪いことをしました。テキストのシナリオにはない展開に持ち込んでしまったからです。

しかし展開は更に面白くなりました。無碍に断られた相方は、今度は話をまとめようとして、いままでの(シナリオどおりの)強気の姿勢を崩しました。そして自分たちと取引するとどれほどメリットがあるか、「売ってもらう努力」を始めたのです。ロールプレイとは言うものの、人間とはそういう性質があります。相手にされなくなると相手にしてもらう努力を始める。交渉は俄然、私に有利になりました。

それにしても「交渉」のロールプレイングがこのような形で紹介されるとは、交渉の真意が間違って理解されていることをあらためて感じる出来事でした。条件や立場をもとに「値段をさげろ」というのは交渉ではなく「お願い」。本来の交渉とはこちらからお願いしなくても、むこうから気持ちよく「値段を下げさせてください」と言ってもらうことです。

例えば「あなたのところのカバンは素晴らしい。あなたの会社も素晴らしい。これからあなたともっと本格的に包括的な取組みをしていきたい。お互いに協力しあいませんか」と言われたら、相手はビジネス以上に感じ入るだろうし、仮に値下げではないかもしれなくても、そこに何らかのメリットを示したいと思うのではないでしょうか。

言葉を変えると「相手に得させる」ことが決め手なのです。相手が喜ぶことをやること。これを「オファー」といいます。営業であれば売り込むのではなくて「相手が得する情報」を持ち込むこと。有利な交渉のコツはオファーです。しかも相手からオファーされるのではなく、こちらから先にオファーすることです。交渉というと暗黙のうちに対立的な関係を想定しがちかもしれませんが、本当は逆をやったほうが本来の有利な交渉ができるのです。

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