簡単な言葉で話す

配信日:2012年4月18日

マーケティングやブランディングの世界では専門用語としてカタカナの文字が多く、人によってはそれがわかりにくさに繋がっているように思います。

仕事の関係で、私がITの人と話していて思うのも同じ事。例えばウェブ制作用語辞典には次の言葉が「よく検索されるランキング」として紹介されています。
「HTML」「アフェリエイト」「Cookie」「アドオン」「スクリプト」「PDF」「CGI」「SEO」「プラグイン」「TOMCAT」・・・。

IT関係者でなくて、これがすべて分かる人もいれば全くわからない人もいるでしょう。私の場合、こんな言葉がひとつのセンテンスのなかに3つも出てきたらもうアウトです。

時には知っている言葉なのに分からないこともあります。先日、次のように言われました。「水野さんのIEはバージョンいくつですか?」

IEってなんだ?そんな難しいこと聞かれても、何を見ればいいんだ?
答えはインターネット・エクスプローラー。それなら知っています。最初からそうやって言ってくれれば分かるのに・・・。「ではこれをスケしときます」ちゃんとスケジュールと言ってくれれば聞き返す必要もありません。短縮語の問題ですね。本来、短縮することでコミュニケーション効率が上がるはずなのに、この場合は逆にわかりにくくなってしまう。

要は自分が理解している言葉を、必ずしも相手が理解しているとは限らないということなのですが、何が理解されていて何が自分だけの言葉なのか分からないのですから難しいものです。一種の「相手への気配り」の問題とも言えます。

いや、これは私自身に対する警句でもあるのです。出来る限りみなさんに分かる言葉でメルマガを書くこと。クライアントさんに分かる言葉で専門的な話をすること。できるだけ楽しく、興味を持ってもらえるように。

先日、10歳になる娘が食事中に私に聞きました。「お父さんが本で書いてる、"ぶらんど"って何?」

うわっ、ど真ん中の質問です。
しかも大人に説明するのだって決して簡単ではない抽象度の高い質問です。正直、子供を前にどのように説明したものか戸惑ってしまいました。できるだけ分かりやすくしようと、次のように答えました。「このジュースについてる名前のことだよ。わかる?」

「・・・わからない」

子供は正直で、そう言うと食事を続け、それ以上は質問をしませんでした。私も「確かにわからないよなぁ」とうなだれました。敗北感だったなぁ。子供にとってトロピカーナは当然、名前だけどブランドではないのです。確かに名前のことだけど、なぜそれがブランドなのか、そこを説明しなければならなかった。プレゼンは見事に失敗です。

企業のなかを見ていると、仕事の出来る人ほど話がシンプルでわかりやすい。これは多くの人が気づいていることかと思います。プレゼンテーションも実にシンプルなものが多く、それゆえに腑に落ちることも多いものです。

そういう点で、プレゼンテーションは事実、広告作りに似ています。AGF時代に上司とミーティングをしていて言われた言葉があります。「上司を説得出来ない者が消費者を説得出来るわけがない」

そこで学んだのはシンプルさの価値でした。特に経営陣向けのプレゼン資料などは、シンプルであることは単純で価値がないと思われがちです。しかしシンプルは単純だけど容易ではない。

だからシンプルであることは工夫が必要です。私はプレゼンテーションに必要なのは「足し算ではなく引き算の発想」だと思っています。言いたいことをどれくらい絞込み、書きたいことをぐっとがまんして文字を減らすか。チャートやマトリクスはかっこいいけど、それはむしろわかりにくさに繋がっていないか。そんなことを考えながら、プレゼンテーション資料を準備します。

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