飽和状態の同質化市場

配信日:2011年

日頃、色々なメーカーの人と話していると、新製品開発のヒット率が低下してきているのがよく分かります。それは売り場を見ていても同じこと。特にコンビニの売り場は売れ筋を理解するには都合が良いのです。そこでは新製品は次から次に出てくるのに、定番化するものはほとんどないように思います。

売り場においてブランドは2つのグループに分かれます。

一つは昔からある「定番ブランド」で、もう一つが次から次に出てくる「新参ブランド」です。定番ブランドは文字通りの定番で、消費者にとって馴染みのあるもの。店舗の売上の80%を占める20%のブランド群です。新参ブランドはその逆で毎シーズンごとに出ては消えていく新製品群。売上では20%を占める80%の製品群となるかもしれません。

この新参ブランドはどの企業からも発売され続けます。「本当に必要だろうか」と思われるようなものも多いのですが、それを止めてしまうのは売上の下落に直結するので、短期的な刺激であろうと企業は製品を出し続けます。自転車操業的なマーケティングです。

流通にも責任があるかもしれません。仮に売れ筋が定番ブランド群であろうと、バイヤーからの新製品の要望は常にあります。メーカーへのプッシュは新参ブランドへの要望、またはPBへの要望として顕れます。メーカーは極端にライフサイクルの短いものであろうと新製品を出し続けなければ得意先から相手にされないので、出し続けなければならない状況に直面します。

一方、消費者は「新製品は一度試せばだいたいOK」と考えているようにも思います。新製品はないよりもあったほうが良いのだけれど、定番ブランドから完全にスイッチするほどでもないという感覚。最終的にはいつものブランドに戻ります。

特に最近の消費者のキーワードは「持続可能性(サステナビリティ)」で、次から次に出てくる新製品を、あたかも波乗りのように消費し続けるのは昔の話のように感じます。むしろ自分にとって気に入ったものを長く使う、大切に使うというのが今風です。だから新製品が出ても買わない消費者も多いのではないかと思います。

実はメーカーのマーケターもそのような消費者の思惑はよくわかっているのです。「新製品を出さなければならないが消費者は必ずしもそれを望んでいない」というジレンマを解決出来ないままでいることが多いのではないか?

一方で、興味深いのは新参ブランドの担当者も短命で終わるような製品を作ろうとは考えていないことです。当然、売れる製品を作りたい。そこで差別化戦略に発想が行きますが、ここでも問題があります。

競合各社から次から次に新製品が出てくる状況で、一体、自分は「誰に対して差別化したら良いのか?」

結果として「競合Aに対しては差別化されていても競合Bに対してはよく似た製品」が出来上がります。そしてそのような製品が次から次に出てくるとしたら、消費者の目には「ほぼ同じ」に見えたとしても不思議ではありません。喩えるなら運動会の棒倒しで敵方の棒をめがけて次々と飛び乗ってくる学生のように見えます。

担当者の目から見たら差別化されたものかもしれないけど、消費者の目から見たら「ほぼ同じ」に見える。しかも市場での製品数が多ければ多いほど、その差別化ポイントはわずかな違いでしかなくなります。ちょうど製品拡張(ライン・エクステンション)を繰り返せば繰り返すほど「ネタ切れ」になるのと同じです。これも新参ブランドが短命に終わる原因です。そういう意味では、今の時代は究極的には「飽和状態の同質化市場」なのかもしれません。

解決に必要なのは差別化を考える時の「顧客視点の有無」です。担当者のアイディアを聞いていると、対競合の視点では確かに差別化されているのかもしれませんが、消費者の視点を考慮することが足らないように思います。もっと言うなら「本当に消費者にとって意味のある差別化なのか」という洞察が不足しているように思うのです。差別化の発想が顧客視点をベースにしなければ失敗するということなのでしょう。

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